ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Between Neuroscience and Marketing

安宅和人: 脳神経科学とマーケティングの間に棲息

UMAMI、うまみ、旨味(続編)、、、化学調味料、味の素は身体に悪いのか?あるいは味盲になる?

こんにちは。


前回の「UMAMI、うまみ、旨味」では、随分沢山の方からお返事を頂きありがとうございました。テーマがテーマだったせいか、それとも私がリストの整理をすると書いたせいか、かなり多くの意見を頂いたので、代表的なもの三つにお応えしたものをお送りします。

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さて本編です。


質問1:「辛味」は味覚の要素の一つではないのでしょうか?(DKさん他数名)


答え:Good questionです。辛みは、普通の言葉における味覚については、たしかに第六の味の軸と言っていいと思います。ただ辛みは舌の上と言うより、口内の痛覚神経(pain nerve)から生じていること、激しい辛みというのはその神経の末端が辛み物質によって死ぬ(退縮する)苦しみであることが分かっており、嗅覚と合わせてchemical sense(つまり化学物質を判別する感覚)と呼ばれる味覚の分類には科学上は含まれません。


これは余談ですが、カプサイシンという赤唐辛子の主要成分は実際に神経の再生の研究の際に、部分的に神経を殺すために使われるほどの物質です。みなさん辛いものをとりすぎないように気を付けましょう。(自重を含めて)

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質問2:味の素は合成物質であり、身体に悪いのではないか?(女性を中心に多数)「味の素、あれはいけません。人工的に作られており、体に毒と読んでから、私は一切使いません」「子供の頃から味の素は人工のものだからあんまり摂取すると体に悪い、いや、頭が良くなるいいものだ、それは天然のグルタミン酸ナトリウムの話だ、とかなんとかいろいろ聞いて実際のところどっちなのかよくわからなくなってしまいました」


答え:本題から離れていますが、非科学的な迷信がはびこっているようなので、お応えします。


味の素はなんらかの食い物、生物から抽出、精製したグルタミン酸のナトリウム塩であって、化学合成したものではありません。尚、負の電荷を持つ酸は固形物として精製するためにはどうしても何らかの正電荷を持つイオンと合わせて塩(えん; salt)にする必要があります。そのため体の中で最も多く害のない正イオンであるナトリウムの塩にしてあると思われます。


アミノ酸有機(炭素)化合物であり、最も簡単な構造を持つグリシンを除き、化学的に合成すると、必ず右手に対する左手のような鏡像異性体が半分生じます。しかしながら、どういう理由か地球上の全ての生命は植物も、動物も、細菌も同じ片方しか使っていないのです。そして使っていない側のものを取り込むと身体に大変な異常が生じる場合が多い。


しかしながら、密度、反応性など物理化学的な性質が、水溶液中で光を旋回させる性質(旋光性)を除いて全く同じのため、我々は長時間かけて結晶化するなどの方法を採らない限り、「右手」と「左手」を分離することが出来ません(つまり単なる化学合成法ではマス製造は不可能)。実際、まだ私が日本にいた頃(1996-97年頃)、昭和??とかという日本の電気会社が合成アミノ酸を分離しないままアメリカで売って大量の身体障害者を生み出し、アメリカで訴えられて1000億だかの支払い命令を受け大きな話題になりました。その会社は倒産したかもしれません。あまりにも愚かな過ちでした。


ということで味の素は精製砂糖と同じく天然のはずです。ご安心を。グルタミン酸は通常必須アミノ酸とはされていませんが、ヒトでは恐らく限りなく必須アミノ酸に近いか必須アミノ酸といってもよいものだと思います。必須アミノ酸の研究は基本的にはアミノ酸を完全に抜くという非常に厳しい実験に耐えうると言うことで、マウスかラットで行われた結果をベースにしており、ヒトの必須アミノ酸というのは実は誰も知りません。明らかに言えるのは、我々をヒトにしている脳内の100兆を軽く越すと思われるシナプス(神経間の接合)の大半が、今このメールを読む瞬間にもグルタミン酸を情報の伝達に必要としていると言うことです。


恐らく問題は次の質問の方です。

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質問3:化学調味料をとりすぎると味盲になるのではないか?(HSさん)「ダシの素が進歩したせいで楽においしい味噌汁ができるようになった反面、そういう味でないと満足できない人達が多くなっているそうです。私の友人の多くは特に「そばつゆ」は自分でがんばって作るより出来合いのほうが「旨味」があって美味しいと言い張ります。(私はそうは思わないのです)特に子供達が加工品でないと「おいしい」と感じなくなっている、とニュース特集でやっていました」


答え:非常に大量にグルタミン酸の入ったものばかり食べていると、恐らく舌の上のリセプターが反応するために必要な閾値が上がり、よほどアミノ酸の量が多くないと神経が興奮しなくなる、つまり感じなくなるのではないかと思います。多くの神経で見られるdesensitizationと呼ばれる現象です。(マクロ的にどんどん強い刺激を求めるようになるのとも同根の現象。)それでは微妙な差が検出できないわけで、このような事態が生じるのではないかと思います。化学調味料はいいけれど、使いすぎるのはこれはこれで大きな問題だ、ということになります。本当はほっておけば、感度は元に戻るのでしょうが(神経は元のままなので)、かつての強烈な味の記憶が脳に残って、なかなかリセットできないのでしょう。


あと、これは質問ではありませんが、化学調味料を使わずちゃんと作った方がうまい、という意見を多くの方から頂きました。当然です。ちゃんと料理すれば、グルタミン酸以外のアミノ酸も色々外に出てくるだろうし、他の雑多なものも色々混じるし、水の分子の集合のあり方も変わるに違いないし、それは味が豊かになるに決まっています。


既成のだしの元、つゆの類については、何から出来ているのかさえ知らない(原料・成分表を見たことがない)のでコメントを差し控えます。もしみなさんが各自で御覧になって、化学調味料グルタミン酸塩などとかいてあったら、一回辺りの量は控えめにしましょう。


(なお、この件につきましては本稿のコメント欄↓に更に補足しました。)


それではまた。ごきげんよう

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