Brazil 25:ブラジルで出会った食べ物たち(2)

Brazil 24より続く)


シュラスコ

ブラジル独自のバーベキュー。ステーキといった方がいいのかもしれない。サーベルとでも呼ぶべき巨大なナイフに肉塊をいくつも刺し、その周りに岩塩をつけて、時間をかけて焼く。焼くときは、大きなオーブンに十本も二十本も並べる。誰かが付きっきりで番をして、時折、それを転がす。テーブルに座ると大きなナイフを持ったお兄さんが三人も四人もひっきりなしにやってくる。みんなどれも異なる部位の肉を持っている。必ずしも牛の肉ばかりではなく、鶏の心臓なども食べる。これが強くて、濃くて、なおかつさっぱりしていて、なかなかイケル。また、インドコブ牛の背中のコブの肉はクッピンと呼ばれ、焼け立てのものは絶品。クッピンは、赤身と白身が交互に重なり、霜降り状になっている肉のトロである。残念ながら、脂が多いため、お兄さんが持ってきてしばらくすると、冷えて固くなりあまりおいしくなくなる。ただ、心配しなくても、テーブルの上の丸いカードのミドリ側を上にしておけば、どんな部分でも頼めば、文字通り「果てしなく」持ってきてくれるのでそれはムリして食べなくても良い。ここの部分は稀少だから、などとけちなことを言われることはない。逆に腹がいっぱいになれば、そのカードを裏返し、赤いのを上にしておけばよい。これらのメインのシュラスコ以外に、取り放題のサラダ、カレー、シチュー、魚のソテー、などがあって大体、一人約八百円(サンパウロの場合)。うまさと安さにウナル。三食の内、二食はカルネ(肉)だというブラジル人ならともかく、普通の日本人が行けば、三日ぐらい肉を見たくなくなるのは必至。


マテ

僕と働いたことのある人なら見たことがあるかもしれない。ヒョウタンの上を切って銀色のリングを取り付けた容器に、マテの葉?の粉をドバッと入れて、お湯を入れる。専用の銀のストローをそのままそのヒョウタンの容器に挿して飲む。見ないと何だかよく分からないと思うが、そのストローの先は平らな円形に広がり、小さな穴が沢山空いているため、茶こしが要らない。画期的なストローである。仲間や家族で回しのみをする。赤道直下のマナウスでは見ないが、南部に行くと何よりも愛飲されている。フォス・ド・イグアスに行ったとき、渡し舟のお兄さんが回しのみしているのを見て、思わず飲ませてくれないかと言いたくなった。

マテは味が出る限り、何度でもお湯を注いで飲める。しかも一回、一回異なる表情を見せる。薄くなれば葉を入れればよい。いずれ容器が粉でいっぱいになるので、そうなると中身を捨てる。個人的には、五回目か六回目の出し汁が好みである。始めの一、二回は濃すぎ、小さな粉が出て来すぎるので若干飲みづらい。日本ではマテ茶と呼ばれているが、これはいわゆる茶ではない。はずなのだが、確かに茶に通じる野性的な味がする。カフェインは含まないといわれているが、なぜかとても癖になる。確かレヴィ・ストロースの『悲しき熱帯』にも魔性の飲み物として出てきたように記憶する。ローストした茶色のものがあるらしいが、緑のものしかこれまで見たことがない。


カイ・ピリーニャ

ブラジルで恐らく最も有名なカクテル。田舎の小娘。サトウキビから作ったブラジルの焼酎、ピンガに、砂糖と、たっぷりのライムを絞って飲む。甘くて、酸っぱくて、強くて、なにやら体の奥が熱くなる、サンバのような、恋愛のような酒である。取りあえず、ブラジルを味わいたければ、これを一杯作って飲んでみるのが正解である。まだいるのか分からないが、恵比寿のにんにく屋の一階のバーにブラジル人のお姉ちゃんがいて、頼めばいつも作ってくれた。但し三年前のお話。何とかピンガをどこかで手に入れ、氷をたっぷり入れたロックグラスで各自試されたし。


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写真説明
1. シュラスカリアのお兄さん

2. メルカド。汚れを知らぬ青空がまぶしい。

3. メルカドの外にあるマナウス港の風景



Brazil 26(最終回)へ続く

(July 2000)


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これが噂のブラジル旅行記の原点。レヴィの本。マテ茶はブラジルだと激安だけれど、日本だと紅茶並みにする。有機と書いてあるけれど、そもそも有機以外があるのか不明。(笑)

悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス)

悲しき熱帯〈1〉 (中公クラシックス)