iPhone到来


Leica M7, 50mm C-Sonnar F1.5 @Mother Farm, Chiba


先週、お仕事端末としてiPhoneを入手した。これがないと、これからのIT・ネット上のサービスを考えるのはかなり困難、というのが表向きの理由だが(笑)、ただ単に欲しかった、と言った方がむしろ本音。


前職ではお仕事端末は日本到来以来、長らくブラックベリー(BB)だったが、これはもう真逆を言っているというぐらい全然違う端末。同じくスマートフォンと言っていること自体に違和感を感じる。ブラックベリーは言ってみれば究極の(英語)メール、スケジュール端末で、会社のノーツとシンクして、最新のメール状況、スケジュール変更にのみ特化した端末だった。ウェブ状の情報を見るのには極度に不適切で、異常に遅く、なおかつ表示も今イチだった。枯れきった技術だけで作られたウルトラリーン端末。(註:リーンとは「贅肉をそぎ落とした」というような意味の経営でしばし使われる言葉)


'94年頃、会社で配られて、等しくいやがって誰も持ち歩かなかったポケベルの進化系とも言える。当時、口の悪い僕たちは、「大体、猫の首に鈴をつけようなんて言う発想自体が間違っている」なんて良く言ったものだ。

ただ、この現代のポケベル、BBは、確かに見るだけの価値があり、スケジュールが次から次へと変わる時、また人に合う場所がこまめに変更される時、いちいちアシスタント、秘書業務をやっている人に確認する必要が全くなくなったのはとても大きい。


一つの問題は、あまりにもスケジューリング、メール確認に特化しているために、これをもっているとメールを見ていないという状況が許されない空気が発生することで、結果、会議中であってもメールを確認して、1行ぐらいの返事をする、なんて言うのが続発する。

will get back to you soon.(すぐに折り返す)とか、
(it) should work. (多分大丈夫)とか、
i am fine w it. (僕はそれでもいいよ)とか。

ちょっと3-4人に一人ぐらいがなんやかんやで端末をチロチロ見ているのは、異様な風景で、これが一見、『生産性』を上げているように感じさせるところが何とも言えず問題。この「枯れた」技術で出来た端末が、明らかに(生産性を)上げるのは新幹線みたいな通常のネット接続、ケータイからの電話がほぼ難しいところでの連絡、確認で、それ以外のところでは、ちょっと仕事に縛られたアリみたいな生活になってしまう。これを持たされている間ずっと、エンデのモモの世界を感じさせられた。働け、そして働け、だって時間なんてないんだから、、、なんて感じ。時たま、得意気に触っている人を見ると、ちょっとかわいそうに思う。



翻って、iPhoneは全くそういう感じの端末ではない。

このiPhoneを三日ほど前に触り始めた時、何かとても懐かしい、忘れていた感覚が戻って来た気がした。しみじみとこのなめらかな感触に降れ、滑らかな、そして生き物のようなインターフェースと戯れていると、ケータイが僕の友達になったような気がした。そう、これは18年ほど前、僕が初めてマックに触れたときの感触そのものだった。


MS-DOSの黒い画面がPCというものそのものであった時代、アップルのマウスとフォルダー、ファイルのビジュアル表示を核とするインターフェースは革命的なものだった。いわゆるPCとは全く同じカテゴリーのものとは言いがたく、10年以上かけ離れたマシンが世の中に現れたという感じがした*1。この体験を当時共に出来た人なら、100人中98人は同意してくれるだろう。


そして学生ながら、大変なローンを組んで初めて自分のアップルが家に届いたときの感動、スタートキーを押し、立ち上がったマックから、Welcome to Macintoshの文字を見たときの感動は、一生忘れられない。、、、、今回、 iPhoneをしみじみ触っていて、思い出したのは、まさにそのときの全く新しいものに出会った感動に近い。


iPhoneのファミリー上の長であるはずの、iPodは第二世代あたりから始めてmininanoとすでに5−6台ほども買った。確かに非常に優れたインターフェースであったけれど、ずっとAppleユーザで、明日つぶれると言われていたときも、持ち金を崩して「買い支えなければ」とPowerBookを買い続けてきた僕としては(バカです)、アップルユーザだけはどんどん進化するねぇ*2、ぐらいにしか思っていなかった。形も無骨だったし、大きさも今イチだった。くるくる回すクリックホィールはたまらなく好きだったけれど、初めてマックを見た時の衝撃、未来からの使者が来た、という衝撃はなかった。


しかし、このiPhoneには明らかにそれがある。入力のクセは多少あり、まだどうやって効率的に日本語を入れたら良いのかすら良く分からないが*3、触る度に未来に触れている気がする。これはジョブスが戻って来たときに、苦渋の決断で退場させたNewtonの直系の子孫であり、初代マッキントッシュ以来のMacintoshの魂を持つAppleの純粋な子供でもある。


こんな本当の思いを捨てることなく、それを純化し、生み出し続けることのできるアップル、そしてその中心であるスティーブジョブスを心から尊敬する。そしてこの時代をともに生きることが出来る幸せをしみじみと感じる。



With my deepest appreciation,


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*1:実際、ウィンドウズがゴミ箱までコピーして、それがそれなりに使えるようになるまで10年近くかかった。そしてOS X、Aquaの非常に安定で、優れた、そしてJobsのいうところの「なめたくなる」ようなインターフェースが出て、ウィンドウズは追いつくことをやめたようにすら見える。

*2:ご案内の通り、しばらくの間、iPodはPC対応していなかった

*3:これはこの間まで使っていたブラックベリーも同じ、、、だから殆ど上のように英語のメールしか書かなかった