「第三の波」の終焉、、、ガンバレ日本!


Leica M7, 50mm Planar F2.0, Fortia SP @東京、銀座


この間、スペイン在住のmadickenさんからコメントを頂いて、日本の豊かさについて時折つらつら考えている。

正直、今、日本がこうなっているのは、madickenさんの書かれている通り、負けたというより、自滅に近いと僕も思う。この度のリーマンの騒ぎで、アメリカが手を打ったスピードは日本のおよそ20倍速というようなもので、株相場は未だに全く回復していないけれど、日本もこのぐらい速やかに膿出しすれば、失われた15年?は5年ぐらいですんだのではないかと思ったりもする。

健全な間接金融が機能しなかったために、また病んだ産業セクター(金融、不動産)の膿(うみ)を出さなかったために、その「土」の上で育つはずの多くのクリエーター型の事業が育つことが出来なかった。Wii、DSを生み出し、ゴールドマンサックスを越える一人当たり利益を誇る任天堂が、日本企業であるのはほとんど奇跡的な僥倖と言える。

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前に少し書いた通り、僕はもうトフラーのいうところの第三の波すらほとんど終わってしまったと思っている。それぞれの波について、トフラーの見立てを簡単に復習しておくと、

第一の波、、、農業革命。一粒の米が秋になると300粒に増やす方法を知った。
第二の波、、、産業革命。組織化、分業化による大量生産が生まれた。
第三の波、、、脱産業化社会。すなわち情報化革命(トフラーの言葉ではないが彼も使用)。生産ではなく、情報を持つ人に価値が移った。

という感じ。これについては、大筋として極めて正しいと思う。詳しくは原書を読まれたし。


で、なぜ上のように思うかというと、こんな感じ。


第一の波は、はじめはエジプトや支那*1の歴代王朝の巨大な権力統制型の農法だった。そして今、もう土地が安いところで、集権的な農業をやっているところにかなう方法はない。アメリカのコーンフィールドしかり、ブラジルのサトウキビ園しかり。


第二の波は、この10年来、完全に中国に中心はシフト。服であろうが、iPodであろうが、Nikeの靴ですら今や中国製だ。次第にこの中国もインドに呑まれていくと思われるが、いずれにしても我々いわゆるOECD諸国がリードをとることは、非常に付加価値の高い高級品以外ではもう困難だと思われる。


第三の波こそが、少なくとも僕が小学校に入った頃からこの30年あまりの世の中の付加価値の中心であったと思われるが、このど真ん中に生きて来た、古くは弁護士、医者、会計士、最近であればSEとか、経営コンサルタントと呼ばれる人たちの行ってきたことの大半は、IT革命とともに葬り去られつつある。

それは僕もそれに類する仕事に久しく関わって来ただけに切実に感じる。第三の波の世界での最大の付加価値は、言ってみれば情報の不均衡をうまく作り出し、それをテコにして儲ける、まあ非常にえぐい見方をすれば、それであった。実際にやっている人、経験を積んだ人しか分からないようなトリック(仕組み)が大量にあれば、それは成り立つ。


が、そのようなトリックは、古くはスプレッドシートの発明により、会計、経理的な仕事が誰にでも出来るようになり、最近では、クイッケンのようなものの発明のために、税金周りの仕事も誰にでも出来るようになった。医療だって、もう大体の症状を叩けば、今、自分におこっていることは大体わからないでもない時代になりつつある。アメリカでは既に診断系のソフトが広まりつつあるという話は時折、耳にする。日本で広まるのも時間の問題だろう。社会のシニア化で動きが見えにくくなっているが、医療費削減の折り、そもそも今の医療機関に殺到することは考えにくく、その視点でも、このトレンドは進むはずである。


コンサルタント、医者、会計士などが大切にして来た分析手法だとか、フレームワーク、バリュエーションなどの方法論は、急速に「知っていること」自体の価値はなくなってしまいつつある。実際の利用においてはかなり入り組んでいるものが多いので、未だに紙で見たぐらいでは、実際には到底使いこなせないケースが殆どだが、こういうことを広める動きが日本では激しく、世界的にもかなり急速に広まって来ているので、この流れはもう止めることは出来ない。仕事を始めて数年ぐらいの医者、会計士、弁護士、コンサルタントが価値を生み出すことは、今後加速度的に困難になるだろう。

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では次の時代では何が?というのが本当に価値のある質問だ。よく外人が言うmillion dollar question(億円価値の質問)、いや僕としてはbillion dollar question(千億価値の質問)と言いたい。そしてそれに対し、大胆な仮説を持ち、取り組んだ国だけが繁栄に向かっていくと思われる。上のどの波においても、勝者になった国や企業は昔も今も全て動きの速いところだった。


これにうまく乗れるか、反るかが勝負であり、ここで外せば日本の繁栄は何十年か考えにくくなるだろう。一方、ここで当てれば巨大な繁栄が来うる大切なときだとも言える。


そういう意味で、あれほど繁栄していたアイスランドも地に落ちた今、この現在の金融危機、不況はとてつもないチャンスであると思う。結局、日本は、明治維新にせよ、先の大戦*2の敗戦後にせよ、ありえないほどの混乱のときでしか偉大な仕組み、偉大なリーダー、偉大な企業を生み出すことがほとんど出来なかった。ある種、極度に危機感が高まったときだけ、本当の力が出る国民ということも出来る。という意味で、これからの荒れ狂う日々が、大いなる育成装置になることは十分にあり得る、むしろ中途半端な状況にならない方が、長期的にはこの国にとってとても良いことなのではないかと、個人的には平穏な日々を愛しつつも、そう思う。


心の底からそうやって危機意識がそろうことが、この国を救う、そして評論などしている暇がないほどの状況が今必要なのではないかと僕は思う。


ガンバレ日本!


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*1:中国は中華人民共和国の略称

*2:1941年12月12日の閣議決定による日本国としての正式名称は「大東亜戦争」。現在、太平洋戦争と呼ばれ気味だが、これは敗戦後のGHQ造語。GHQ統治下の正式呼称禁止、徹底した検閲の結果、生まれた