ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Between Neuroscience and Marketing

安宅和人: 脳神経科学とマーケティングの間に棲息

From CT to DC (5) : DC

(4)より続く


アナポリスの町はとても小さいけれど、とても愛らしく、人も優しい。港のそばの、二百年以上もやっている食事屋で(!)、店オリジナルのパスタを食べる。ケイジャン*1に香ばしくいためた帆立の貝柱とカリッとなるまで外を炭火で焼き上げたエビを、甘口の深みのあるソースに絡めてパスタと共に食べる。辛さと香ばしさ、そして独特の甘みが口の中で対立し、調和していく。絶品である。アメリカといえども二百年はだてじゃない、そんなことを考えながら、ほうほう頬張る。あんまり外の夕陽が美しく、町が優しいので、宿をDCにとったことを後悔する。こんな修学旅行みたいな旅行じゃなくて、この町のような美しいところで、ただヴァケーションをしゃれ込んだ方が良かったかなあ、なんて思ったりもする。移動する度に、日本のことを考えてしまうのにも疲れてきた。あとの旅行はただ「目」に徹することにする。「目」にも心があるにはあるのだが、、、。

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DCは広い。


面積的には高々十マイル(約十六キロ)四方に過ぎないのだが、キャピトル(国会議事堂)、ホワイトハウス、上院(セネート)、下院(ハウス)、財務省国務省リンカーン・メモリアル、などの連邦政府機関が取り囲むエリアは異様に広い。ざっと見に幅0.5キロ、奥行き五キロメートルぐらいか。これだけの見晴らしの空間を都市のど真ん中で見たことはこれまでない。今後もブラジリアを除けば、見ることなどないのではないか。ホワイトハウス裏から、空にそびえ立つ槍のようなワシントン・モニュメント(初代大統領を祭ってある)まで歩き始める。が、目の前に見えるにも関わらず、いつまでたっても近づいている気がしない。更に近づいてようやくそれが巨大さによる錯覚であったことに気付く。その塔の周りにいる人が蟻のように見える。



Contax T2, 38mm Sonnar F2.8 @Washington DC



空が大きい。至る所で、子供達が、凧を揚げている。


懐かしい。子供の頃、二百メーターの特製凧糸なんて使って、良く裏の海で揚げていたのを思い出す。ゲイラカイトが上陸したときはあんまり簡単に上がるので驚きだった。でも結局、奥深い和凧に戻って、しっぽの長さを調節しながら、幼なじみと良く揚げたものだった。独楽(コマ)やビー玉と並んで、子供の頃の、本当に楽しい思い出である。そんなことを思いながら歩いていると、黒人の小さな男女の兄弟が、凧を揚げようとしてうまく出来ないでいるのが目に入る。お姉ちゃんらしい女の子が凧を持ち、弟らしい男の子が糸(巻き)を持っているのだが、一緒に走るので上がらない。女の子の方に、なるべくじっと持っていること、そして男の子の方に、一気に走るんだ、と教える。


瞬く間に揚がり始める。


無邪気な笑顔が広がっている。



Washington DC


(6)へ続く



(April 2001)

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*1:Cajun, 南部、特にニューオリンズ周辺のスパイシーな味付け。