白と黒の間

この間、どうやったら筋の良い思考が出来るのか、どうやったら筋よく答えの仮説にたどり着けるのか、と真顔で、マネジメントコンサルタントを行っている知人に聞かれた。

彼は、僕の長年勤めていたプロフェッショナルファームにいる訳ではないのだけれど、十何年前の学生の頃、僕のいたファームでリサーチャーとして(今で言うインターンみたいなものだ)バイトに来ていて、その頃からの知り合い。

僕が随分長い間アメリカに行っていたりしていたこともあり、同じ会社にいた訳でもなく、完全に音信不通だったのだが、数ヶ月前、たまたまある大先輩が催しているパーティに行ったところ、久しぶりに出会ったのだった。

僕はどうも彼たちのチームのチューターをしていたらしく、いやチューターでもないのに、色々訳の分からない爆撃を繰り返していたらしく(笑)、彼にはずいぶんな野郎だと鮮烈に覚えられていたようだった。

実に素敵な人物なのだが、僕はすっかり忘れていて(本当に失礼な野郎だ!苦笑)、五分ほどお話ししているうちにようやく思い出した。


Leica M7, 35mm Biogon F2.0, RDPIII @Grand Canyon National Park

僕は割合、あっという間に仮説が立つほうで、デタラメかもしれないけれど、まあそれは適当にメッシュよくこうなんじゃないかな、なんて思う。というか、わりとポンと、この辺じゃないかな、この辺は筋悪だな、というのが(正しい、正しくないとかというのと別に)割とすぐに思い浮かぶ方だ。もちろん間違っていることもあるにはあるが、ここは長年の訓練のこともあり、経営関連、特にマーケティング周りのことであれば、それほどずれることは多くない。

そんな「野生の勘」野郎(笑)の僕のことを彼は良く覚えていてくれていて、それでせっかく久しぶりにあったので、これをチャンスに、ということで、長年の謎?を僕に聞いたのだった。

僕は「感性こそ知性」、という価値観、あるいは信念、考えを長らく、実に歳にして17-18の頃から持っており、彼に、「一瞥したときに、あるいはその生の事象を見たときに、いったい何をどこまで感じられるかが、実は勝負なんだ」とそう言った。

このことが、どうやって答えの仮説につながっているのか、彼には落ちなかったらしく、手を変え足を変え聞かれた。

僕の言わんとすることは、最初に今起こっていることの本質と、課題、あるいは見極めのポイントを、どこまで一度に感じられるかが勝負なんだ、ということだったのだけれど、これがなかなか分かってもらえない。

そういう感じることに対して、本当に価値があると思うこと、そして区別する必要があると自分で本当に思っていること、経験していることしか、瞬時に区別することも、認知できないんだ、とそう言って初めて少し分かってくれたようだった。


そこで僕が彼に説明した比喩は、こういうことだった。

白と黒がある。

この区別はどんな人にだって出来る。なのにひとは白黒つけたがる。これは白だ、これは黒だって。

これは愚かであり、間違いなんだ、というのが僕の言ったことだった。

世の中は白と黒で出来ている訳ではない。

むしろ白も黒もない。白と黒の間にある無限の段階のなかにこそ、世の中の本質がある。

そこをどこまで細かいメッシュで差を見分けることが出来るか、その濃淡を感じ取ることが出来るか。またその濃淡が生み出すパタンやクセ、形をどこまで見分けることが出来るか、それがその人の価値観であり、生き様であり、そして学んできた世の中の理解、それに対するappreciationそのものなんだ、、、そう伝えた。


そう、世の中を白と黒で見分けるのは間違っている。そしてこれは非常に馬鹿げたことだ。

自然に向かう科学の現場であってもそうだし、経営の問題解決の現場でもそうだ。人間関係なんて、そればかりだ。

自然に立ち向かう時、新しい発見はだいたい非常にsubtleな、つまり微妙な差異にひそんでいることがほとんどだ。そう言う話をずいぶんと目にし、耳にしてきた。私の行ってきた限られた経験でもそうだったし、ノーベル賞をとられたときに、田中耕一さんがお話しされていた話もまさにそうだった。


そうそんな微細な差異や違いをどこまで見分けることが出来るか、それが意味があると思うかが、やはり知性であるし、感性であると思うのだが、いかがだろうか。これこそ(メルロ)ポンティのいうところの裸の知覚だ。

そしてそれを磨くことが、自分の何か深いものを磨き、問題解決につながることではないか、

僕は、そう思っている。




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