ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Between Neuroscience and Marketing

安宅和人: 脳神経科学とマーケティングの間に棲息

不動産購入に関する一つの(ショックな)気付き

(感謝とお詫び)

昨夜、寝がけにぼそっと書いたエントリにたくさんのアクセスを頂きありがとうございます。私個人としては発見内容についてはオドロキでしたが、世の中的にはこれだけ買っている人も多く、もしかしたら常識なのかも、と思っていたので、ちょっと反応の大きさにびっくりしています。


お詫びと言うのは下の三茶のケースに上げた計算が、間違っていたことで(ローンのところで手数料が二度カウントになっていました)、この場合ですと、買う場合の損は約1000万円ではなく、200万円になります。今回自分が作ったスプレッドシートがブログに書くには複雑で、なおかつ極めて個別性が高いケースだったので少しでも一般化しようとして、つなぎ合わせるように新しく作ったのが失敗でした。(苦笑)下の表記は初めて読む人のために、元の表現を残す形で、修正しました。


みなさま、本当に申し訳なし!


ただ、全体としての考え、僕個人のケースでは、このフレームワークに乗っ取って計算すると、大きな損になったことが確実なことはお伝えしておきます。こんなブログの数字を丸ごと信じる人はいないと思うものの、本当に申し訳なさで一杯です。


本日、午前中に現在インドにいる前職の弟子の一人からメールが来て、フレームワークも考え方も正しいが、なぜか計算にらしからぬミスがありますよ!と指摘を受けました。(Dさん、多謝!)長年、分析を教えてきたような人間なだけに、顔から火が出るほど恥ずかしかったのですが、職場ではセキュリティポリシー的に直しようがなく、今ようやくこうやって修正、お詫びをしている次第です。ブログと言えども、次回からは再読ぐらいしてアップするようにいたします。


(以下が本当のこのエントリです)



Leica M7, 50mm C-Sonnar F1.5, RDPIII @Phuket, Thailand


ふしぎなことが起こるものだ。


僕はなんというか腕一本のような仕事を続けてきたためか、長らく貸家主義で*1、これまでずっと買わずに住んできた。


しかしながら、生活の過酷さのため、職場にある程度の時間で通える比較的都心に近い城南地区に住み、家族と苦痛が発生しない程度の空間で住んでいると、それなりの家賃が発生し、本当にこんなに家賃をずっと掛け捨ての保険のように払っていることは正しいのだろうかという不安がそこはかとなくずっとあった。


自分が育ち、親が住み続けている地域が、長らく全国屈指の持ち家率を誇るということがあり、このことは親も不思議に思っているらしく、何度か「買うつもりはないのか」「家賃は完全な無駄ではないのか」「そんなにお金を毎月使っていればこの辺りでは目が出るような豪邸が買える」と聞かれた。


都度、上の説明をするのだが、納得が得られない。この未来の不確定な国の中で、腕で仕事をしていて、5年以上のローンを組むということ自体が不安なんだ、ということが分かってもらえない。*2

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ということがあり、今の町に引っ越して以来、一応、不動産屋さんにいくつかお声がけをし、何かいい物件が出たら教えてほしいと長らくお伝えしてあった。


子供が既に小学校なので、転校させたくないということもあり、学区指定で探しているのだが、そのためかほとんど物件が出てこない。(笑)


まあそれも縁だろうと思って、かれこれ一年半ほどなのだが、この数ヶ月立て続けに、掘り出し物件が出てきて、いずれも物件を直接仲介する不動産会社の方から、他に公開する段階の前に打診を受けた。一つがかなりいい感じの土地で、一つが破格と言ってよい条件のマンションだった。


土地は友人の建築家やハウスメーカーの人に見てもらったりすると、色々お金がかかりそうな土地だと言うことが分かり*3、価格的に折り合わなかったのだが、マンションの方は相場の二倍近く広い物件であったため、コレは!と若干興奮し、内覧で、ちょっと値段的にはたかいけどなー、と思いながら一発で申し込みをした。


ただ、万一買う場合に想定していたよりもかなり高い物件であったので、それなりの額のローンを組む必要があった。月々の払いを今の家賃と同じにして、ボーナス払いを少々積めば、自分が引退するまでの20年ぐらいでも買えなくはないかなと。


で、その事前審査が無事とおれば、当然最初に申し込んだ私にその物件が決まるとのことだった。一つ言われていたのは、即金という人が出てきた場合には、売り主が(法人物件だった)、売り急いでいるので、そちらを優先されるケースがあり得るということだった。が、不動産屋さんが言うには、それは値段的にもなかなかないと思う、ということでまあ、なるようになれと待っていた。


すると、翌日に連絡が入り、即金の人が現れてしまった、という。もともと先述の場合があり得るというお話だったので、まず売り主に確認します、ということで電話を切った。はたして、やはり物件はその即金野郎(笑)に行ってしまった。どうも業者のようだった。うーん、単なる業者間の売り買いなら一般人を場に混ぜずにやってくれと言いたいが、しょうがない。これも縁だと思い、すっきりとあきらめることにした。

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話は続く。


で、結局僕は得をしたのか、損をしたのかで、正気に戻り計算をしてみたのだが、どう計算をしてみても、その物件の場合、20年間で、数千万円以上の得をしていると出る。「得」と言うのは投下した資本と残った資本(不動産含む)の差分がどちらが大きいのか、と言うことである。え”っなのだ。そう、計算上はこの物件は明らかに買わない方が得だったのだ。モノの1時間もかからない計算でこの結果が出た。*4


では、値段で折り合わなかった土地の方であれば、採算が合ったのかと言えば、これも多少はマンションよりましだが、全く合わない。こちらの方は、もう東京らしい狭小な土地を買って、クルマが停められて、今の部屋と同じ広さがあればよい程度の条件なのだが、合わない。



???


これは全くもって僕の想定していない異様なことで、500万程度損をするというぐらいであれば十分納得できたのだが、妻もそれって本当にあり得るのか、どうして誰もそのことを正面から言わないのか、と言う。*5


僕もおかしいと思うのだが、桁を間違うようなエラーを起こすとも自分では思えず、何日間か数字を眺め続けてみてやはりこれは半ば以上の真実を含んでいる、という結論に到達した。

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表面的には、次の二つだけの議論なので、これは買った方が良いのでは?となる訳だが、実際にはそうならない。


1.借りると残る不動産価値=0

2.買うと不動産価値が残る



買うケースが借りる以上に負になるのは、以下の6つの総和の結果起きる。


(1)取引にまつわる各種手数料、、、これは当初不勉強のためあまり想定していなかったが、物件の大体1割程度発生する。簡便のため、物件を5000万円とすると500万近く見ておく必要がある。


(2)不動産そのものの価値の目減り、、、土地を買う場合には、20年後には上物が事実上ただかそれに近い状態として売却せざるを得ず、マンションの場合は売却時にリフォームしていても年率2−3%は価値が落ちる。上物はいくつか見積もりを取ってみたが、建坪が30-35坪で2500万円は掛かり、マンションは20年後には少なくとも価値の4割は消滅する(5000万の物件であれば2000万円程度)。そう、これは価値が無条件に落ちていく投資なのだ。なので、残る資産はそれを差し引いたものとなる。


(3)固定資産税、、、そもそも借りている場合、全く関係のないコストが持ち家の場合には発生する。これは年数十万程度だが、20年分となるとバカにならない。500-1000万円程度になる。大型の引越を2年ごとにして、契約更改で2ヶ月程度とられているような負担だ。


(4)保全コスト、、、マンションの場合は、毎月管理費および修繕費の積み立てが相当額発生する。仮に抑えめの月3万円でも20年で720万円。通常15年過ぎると更に上がるため20年で1000万程度見ておくのが無難と考えられる。またこれに加えて、20年も住んで、借りているのと同じレベルのコンディションを維持しようとすれば、ほぼ間違いなく最低でも500万円以上のリフォームコストが発生する。こちらは戸建てであっても同じだ。


(5)ローン、、、例え金利がならして2%に押さえられたとしても、20年で22%程度の金利が発生する。この辺りはそこら中にローンシミュレーターがウェブ上に存在しているので信じられない向きにはやってみれば良い。上もの分は現金で買ったとしても、土地の分が仮に4000万円だとしても880万円。3000万円だとしても660万円。2000万円(城南地区では発見ほぼ不可能)だとしても440万円。

http://www.nextjp.com/hensai/hensai.html
http://house.biglobe.ne.jp/special/sim/index.html


(6)頭金と頭金の運用益、、、これも借りる場合には発生しないコスト。仮に2000万ここで入れるとすると20年で数百万円以上の価値が創出される。これは買う場合には見えない損失の一つ。例えばの計算は次で出来る。

http://www.my-fp.com/cal/

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モデルケースとして例えば城南地区で人気の町、三軒茶屋*6に現在、70平米以上の2LDK(リビングと親子それぞれの寝室)、駐車場付き、築10年以下の貸し物件で探すと概ね30万程度だ。(ヤフー不動産による)20年の家賃は7200万円。更改手数料、引越手数料が二年で2ヶ月分だけ掛かるとすると7800万ということになる。


一方、買う場合、同程度の広さの物件がマンションの場合、概ね7000強-8000万円(同)なので、ほぼほぼ同じと言える。ここでは簡便のため7500万円とする。


これだけであれば、やっぱり圧倒的に買いか、と言うことになるが、実際には、買う場合には上の6つの和を資産から差し引く必要がある。以下は20年のローンを組み、その20年後に自分の手元に存在している資産を雑に計算したものだ。*7


(1)手数料 約750万
(2)価値の目減り 約3300万(価格7500万円。マンションのため目減り△2.5%/年の場合)*8
(3)固定資産税 約600万(概算、、初期減税が効かなくなるので多分更に上がる)
(4)保全コスト 約1500万(月4万程度の保全費+リフォーム500万円。後半で高くなる保全費含まず)
(5)ローン 約7600万(頭金2000万で、手数料を含む6250万円*9@2%で借りる場合)
(6)頭金と頭金の運用益 約2500万(頭金2000万を利付き国債1.8%で運用すると660万付く)

16250万円15500万円(手数料でのダブルカウントを除く)



(結果)

借りる場合 △7800万円
買う場合 7500マイナス16250 15500=△8000万円


→ 不動産価値を含めても、買う方が約1000万円200万円損をする。

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私は実際には別の町に住んでいるが、更新条件も含め、相場よりも低めに住居を借りているので、借りる場合の総出費が更に減り、買う場合、更に出費が大きいケースとなる。結果、このギャップはかなり大きく出てくる。これが私の場合に、数千万の差が発生した理由だ。


具体的にこの三茶のケースに当てはめると、30万円の家賃で相場35万円強相当の物件(従って累計家賃は上のシミュレーションと同じ)にすんでいるという形に近く、それに広さ、立地などスペック的に相当する物件購入価格が9000万円台後半から1億円強することになり、若干目を疑うような差になったのだった。


もう少し詰めると、一体どの程度の家賃で借りている人は、どの程度の物件の購入で均衡するのか算出できる。

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という気付きがあって間もなく、日本を代表する不動産ディベロッパーの友人(部長)と飲むことがあった。この話をツラツラしていたのだが、彼もここまでとは認識していなかったらしく、絶句していた。


こういう歪みはもっと明らかにされてよいのではないだろうか。いずれにせよ、今回の不動産購入に関しては、まるで神の加護があったように感じている。




ps. 実際には門外漢なので、根本的な間違いをしている可能性もあります。そのような気付きがあれば、それはそれでうれしいので何かあればお知らせください。



コメントを拝見し、追加関連エントリを書きました。↓

*1:要は長年にわたってローンにコミットするというのが正直すぎて出来ない

*2:例えば、このように税金がフローからは集まられない時代が続くと、遊休土地の資産課税のようなことがいつ始まってもおかしくないのではないかと、僕は思っているが、その場合、土地は暴落すると思う

*3:擁壁とか基礎の打ち込みなど

*4:僕は引退か顧問生活に移る時には一度売っぱらってもう少しましな生活空間に移りたいと思っているので、実際に自分の手元に何が残るのかが大切と考えている。

*5:要はあなたの勘違いではないのか?笑

*6:註:私の住んでいる場所ではない

*7:NPV補正は特にしていないのでこれによる誤差は存在。

*8:なお、買った場合に残る不動産は、売却時3%の手数料を不動産屋に払う必要があるので、資産としての差は更に大きい。また、ヒルズ、ミッドタウン、汐留、月島のように都心での大型造成が続く限り、売りたいタイミングで、想定している値段(相場)で売れるかどうかはかなり危うい。

*9:7500+750-2000