ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Between Neuroscience and Marketing

安宅和人: 脳神経科学とマーケティングの間に棲息

カンニング2.0


Leica M7, 50mm C-Sonnar F1.5, an Agfa film @ London, England


京都大学入試で発覚した「ソーシャルカンニング」というか、「カンニング2.0」事件の結果、まさに待っていたかの如く、日本の受験のやり方がどうこうという議論が起きている。でもこれって問題を履き違えていると思う。

まず必要なのは、このような事がいくらでも出来かねないこのようなIT時代に、共通試験も含めて、どのように「試験」に対する対応が必要かという議論であり、また京大の仙石先生 (@ssengoku) がいみじくも指摘されている通り、このような悪質な犯罪にどのように法的に立ち向かうかという議論だ。そもそも一発試験が良くない、難しすぎる試験がどうこう、とかという話ではない。

座席に座って、参考資料など何も持たずに受ける試験、というものそのものの正真性 (integrity) が、これら情報デバイスと検索、ソーシャルエンジン、情報通信環境の出現によって、揺さぶられているのであり、ある種、人が、知らずITと融合し、攻殻機動隊的になったこの時代で、試験を通じ、人を選ぶというのは、どのように行うべきかが実際には問われている。

それは、筆記であれ、共通テストなどの標準化された試験であれ関係のない問題だ。一発試験であっても、SAT, TOEFL, GREなどの何度も受けられるタイプの試験であっても、提出前に答えを直せるような試験であれば状況は同じだ。面接以外の、エッセイや、出願趣意書など、ほとんどのお勉強的「試験」に対しても、このリスクはこの時代存在しているのであり、それに我々の社会がどう対応していくかが問われている。

対症療法的には、とりあえず、試験場へ金属探知機などを導入して、端末を全て取り上げる、というようなことだろうが、これらはよほどうまくやらないと、かつて話題になっていたパチンコのリズムマシン?などと同じく、そう簡単には徹底、実施、そして問題の回避は、困難だろう。何しろ通信技術は次々と生まれ、機械は小型化し、手段は多い。デジカメにWiFiが一体化したSDカードを載せて、写真を自動でクラウドにアップするような時代なのだ。

では、会場での通信機能の停止、通信妨害はどうか?これは試験官が、この様な通信に依存せずに業務ができるのであれば、案外可能かもしれない。携帯ネットワークだけでなく、WiFiも含む複数の周波数帯をブロックする必要があるが、、。

この問題の土壌はネットにつながる携帯が普及し、大半のことは検索やWikipediaにかければ、分かるようになった時に、実は発生している。検出されていないだけで、おそらく相当の事件が見えないところで色々起きていた可能性は否定できない。

が、今回は、それでも解決できないような問題の回答に関し、クローズな共犯者、共同回答者が必ずしもいなくとも、ネット上のIDさえあれば、ソーシャルエンジンを使うことで、対応可能ということを示したところに新しさがある。このレイヤで対応することは可能か?

各種ソーシャルエンジン側にこのようなタイプの投稿、掲示をリアルタイム的に止めさせろ、スクリーニングしろと言っても、それは純粋な人を介さないリアルタイム反映を売りにしたITプラットフォームなだけに、完全なブロックがムリなことは、ほぼ自明だ。

一見、最近米国で問題になっている検索リスティング、広告などのスパム入稿と同じように見えるかもしれないが、ちょっと考えればわかるとおり、今回のような試験問題の場合は、仮に人間が直接投稿をみても、問題のある入稿なのかそうでないのか、見分けるのが明らかに困難だからだ。

ということで、直接的な発生の回避は、単純には難しいように思われる。遺伝子に異常があると分かっても、実際には手が打ちにくい遺伝病の治療にどこかしら似ている。

アメリカの共通試験を一手に引き受けているETS*1 が続々投入している、コンピュータにより次々に問題が人によって変わるタイプの試験*2 であれば、後に戻りようがないのである種の答えになるかもしれない。

うーん、これは難しい。そもそも取り締まり自体をおこなう大学の法的な力も足りていないようなので、この法改正をしつつ、日本に閉じない問題なので、これは世界的な対応も見ながら、出来る限りのことをやった方が良いだろうなと思う。

本質的な議論に立ち返って、対応が前に進むことを願いつつ。


ps. twitterでのアカウント、2年以上ほとんど止まっていましたが、徐々に使い始めました。ハテナと同じハンドル名です(@kaz_ataka)。よろしければご笑覧ください。

*1:Educational Testing Service http://www.ets.org/

*2:Computer-based Test: CBT