谷は、つくるものではなく、育つものだ

Amami, Japan 1.4/50 Summilux, RDPIII, Leica M7 『風の谷という希望』、谷本、が世に出て10か月が過ぎた。「風の谷」という希望――残すに値する未来をつくる作者:安宅和人英治出版Amazon 新しい地方創生をテーマとする国交省×NewsPicksのイベントに招かれた…

AI native時代の袋小路 ― 見立てる力はどこから来るのか

美山、和歌山、日本 1.4/50 Summilux ASPH, Leica M10P, RAW このところずっと頭の中から離れない一つの課題についてここに置けたらと思う。2月の頭に、「スマイルカーブの終焉と『コ』の字型社会の到来」というブログをポストした。これからサイバー空間で…

年間二千人じゃだめなんですか? — 社会は高度知性をどう使うのか

Numbered, in the storm. Rusutsu, Japan Leica M10P, 1.4/50 Summilux ASPH, RAW 2015年春、文部科学省とROIS(情報・システム研究機構)による緊急の集中討議で、ビッグデータ・AI時代の人材育成についての総合検討が行われていた*1。その際、僕は、 リテ…

AIの透明性とはなにか?

Inspiration is not traceable Daruma Temple, Takasaki, Gunma, Japan Leica M10P, 1.4/50 Summilux ASPH, RAW いつだったか、映画her*1の主人公サマンサ(パーソナリティを持つAI)の声であった、女優スカーレット・ヨハンソンが、OpenAIが生み出す音声に…

第六の象限

Leica M10P, 1.4/50 Summilux ASPH, RAW 2015年の秋、ハーバード・ビジネス・レビューの誌上、そして経産省 産業構造審議会の場で、ひとつの地図を示した。縦軸にモノ・カネ、横軸にデータ・キカイをとった産業マトリックスだ。当時、多くの論者の目はGAFAを…

2026年は1984なのか ― AIと国家、そして合法の解釈権

Leica M10P, 1.4/50 Summilux ASPH, RAW米国防総省が提示した"all lawful purposes"(法的に許されるすべての用途)での利用を認める契約文書を、Anthropicが拒否したというニュースを数日前に見た*1。その契約には、全自動の殺傷可能な兵器や、国民全体をリ…

閉じる世界と閉じない世界

A fleeting moment of perfection Leica M10P, 1.4/50 Summilux ASPH, RAW 先日、友人に誘われて天ぷらの名店に伺う機会があった。日本でも指折りと言われる店だ。カウンターに座ると、大将が食材、そしてこちらに静かに向かい合っている。食べる速度、箸の…

関数主権 — AI時代に問われるもう一つの主権

Putney, VT, U.S.A. Leica M7, 1.4/50 Summilux, RDPIIIこの半年ぐらい、ソブリンAI(国家主権AI)をどう考えたらいいんですかね、という質問をよく受ける。質問をされる人は政治家の方だったり、政府の方だったりと色々だ。ただ、話をしていて、違和感が残…

スマイルカーブの終焉と「コ」の字型社会の到来 ― AI時代に価値はどこへ消えるのか

Onomichi, Japan LEICA M (Typ 240), 1.4/50 Summilux, RAW 先日、経産省の局長になった旧知の友人と話していたときのこと。AIの話になり、僕はこう言った。「サイバー空間で閉じうる領域については、最終的に残るのは"ディレクション"と"ダメ出し"だけにな…

現場と構造のあいだ

Golconda Fort, Hyderabad, India LEICA M (Typ 240), 1.4/50 Summilux, RAW 「現場に来てから物を言え」この言葉には、確かに誠実さがある。空気の湿度、土の匂い、人の間合い。そこに立たなければ見えないものは多い。現場で汗を流す人々の経験と勘は、ど…

疎空間のエコノミクスはなぜ壊れて見えるのか

Somewhere in the United States 疎空間の経済が成り立っていない、という言い方は、ときに強い反発を招く。再分配があるのは当然ではないか。それは経済の失敗ではなく、税や財政の設計の問題ではないか。そうした声はもっともに聞こえる。しかし、こうした…

因果より先に、構造を見る

End-Cretaceous Tsunami Deposit and K-Pg Boundary National Museum of Nature and Science, Tokyo Leica M10P, 1.4/50 Summilux ASPH, RAW 先日、僕の研究会と共同研究している企業の方が、学生の発表を聞いてこう言った。「相関ばかり出てくるが、因果の…

経済効果という謎概念について

National Museum of Nature and Science, Tokyo Leica M10P, 1.4/50 Summilux ASPH, RAW また選挙が行われる。こういうイベントが行われるたびに、決まって出てくるのが「経済効果〇〇億円」という話だ。選挙に伴うポスター印刷、会場設営、警備、弁当代、宿…

名前のない能力について

Somewhere in Japan — LEICA M (Typ 240), Summilux 50mm f/1.4, RAWいまの社会では、能力の有無はずいぶん単純に測られている。 市場で価格がつくか。組織に所属しているか。成果が数値化できるか。この条件を満たせば「能力がある」とされ、満たさなければ…

AIが成功しすぎると、社会は壊れる

New York City, Leica M7, 1.4/50 Summilux, PN400N 先日、「教育が成功しすぎると、社会は壊れる」というエントリを書いた*1。プラトンが本当に怖れていたのは、無知な市民ではなく、よく教育され、正しさを内面化し、それゆえに誰にも止められなくなった市…

教育が成功しすぎると、社会は壊れる

SONY ILCE-7, 1.4/50 Summilux, RAW 先日のゼミで、疎空間における教育について議論していたとき、こんな問いが、その場に置かれた。プラトンが一番怖れていたのは、 無知な市民か? それとも、優秀だが「教育されすぎた」市民か?一見すると哲学史の話に聞…

言葉が持つ思考の粒度

鎮国寺 宗像 Leica M10P, 50mm f/1.4 Summilux ASPH, RAW 前回、failure を「失敗」と訳した瞬間に起きるズレについて書いた。 設計や構造の話が、いつの間にか責任や評価の話に変質してしまう、という違和感の話だ。kaz-ataka.hatenablog.comただ、書いてみ…

Failureは「失敗」ではない

※Disaster-ready の日本語訳を進める中で浮かび上がった、翻訳以前の話です。 Leica M7, 50mm f/1.4 Summilux, RDP III Mediumで英語の連載を書き、それを日本語に訳す過程で、どうしても引っかかって離れない言葉がある。それが failure だ。日本語では、ほ…

知性は、どう育っていくのか

海士町 隠岐 Leica M10P, 50mm f/1.4 Summilux ASPH, RAW 先日の講義で学生からもらった質問について、前編に続いて残り4つの問いを考えてみたい。(前編はこちら) 「内発的な問い」は、どの瞬間に生まれるのか? 教育は、どこまで問いを与え、どこから手放…

知性は、どこで立ち上がるのか

まだ言葉になる前の、かすかな兆し。 Leica M7, 50mm f/1.4 Summilux, RDP III 駒沢オリンピック公園-原文を英文で書いたブログ(以下のMedium連載)の翻訳が続いたので、いつもながらの日本語オリジナルなブログも書けたらと思う。medium.com僕が大学で担当…

Disaster-Ready:停止状態に陥らない社会をデザインする

本稿は従来の持続可能性の枠組みを超えた社会の存続可能性を探求するMedium連載"Designing for Viability"(存続可能性のためのデザイン)シリーズ第5回を、日本語読者向けに翻訳したものです。前号より続く。medium.com Why survival is designed — not imp…

開疎化:孤立なき疎な系をデザインする

本稿は従来の持続可能性の枠組みを超えた社会の存続可能性を探求するMedium連載"Designing for Viability"(存続可能性のためのデザイン)シリーズ第4回を、日本語読者向けに翻訳したものです。第3回(日本語版)はこちら。medium.com_「疎であること」はし…

都市集中という「隠れた」システミック・リスク

この連載では、従来語られてきた「持続可能性(サステナビリティ)」という枠組みを一度外し、社会がそもそも“壊れずに成り立ち続けられるのか(viableであり続けられるのか)”という問いから、社会設計を考え直しています。 Shibuya Station area, Tokyo — …

存続なき持続はない — Viability before Sustainability

この連載では、従来語られてきた「持続可能性(サステナビリティ)」という枠組みを一度外し、社会がそもそも“壊れずに成り立ち続けられるのか(viableであり続けられるのか)”という問いから、社会設計を考え直しています。なお、ここでいう「存続可能性(v…

心とは何か ― Neuro-samaが問いかけるもの

本稿は従来の持続可能性の枠組みを超えた社会の存続可能性を探求するMedium連載"Designing for Viability"(存続可能性のためのデザイン)シリーズ第1回の日本語版です。medium.com Côte d'Azur, France, Leica M10P, 1.4/50 Summilux ASPH2025年末、一つの…

菌類人類

土が生まれる現場 @山梨県八ヶ岳 1.4/50 Summilux ASPH/ Leica M10P 安宅和人『風の谷という希望』(英治出版、2025)図版8-9より昨夜、宇野常寛さんの宇野書店にて*1、『風の谷という希望』(#谷本)の出版記念で、対談を行った。note.com宇野さんは #谷本 …

海面上昇時代と三大都市圏

The Afsluitdijk, Netherland 1.4/50 Summilux ASPH, Leica M10P, RAW風の谷、すなわち過密な都市集中型社会に対するオルタナティブづくりを、100名近い様々な分野の専門家や候補地の方々とともに8年近く検討してきた。これに基づき、先日、存続可能(viable…

3つのスキル

Shelburne, VT, USA (1.4/50 Summilux, Leica M7, RDPIII)僕の主要な取り組みの一つは、データサイエンティスト協会(DS協会)のスキル定義委員会での「データ×AI時代において、データ×AI プロフェッショナル(≒ データサイエンティスト)に求められるスキル…

『風の谷という希望』(#谷本)をどう読んだらよいか?(保存版)

Leica M10P, 1.4/50 Summilux ASPH, RAW本書の執筆・構造化・完成をともに伴走いただいた岩佐文夫さんからは「まず頭から通して読むのがよい」とコメントいただいています。それは間違いなくベストな読み方です。note.comですが、地方や疎空間に関わる多くの…

谷本とイシューアナリシス

Leica M10P, 1.4/50 Summilux ASPH, RAW 谷本は巨大なイシューアナリシスと言うべき一冊だ。 何をやりたいという意思がなければイシューなど設定のしようがないと、イシュー本の改訂版に書いたが、意思があればイシュー(真に解決すべき課題)が見えるわけで…