セグメンテーションとMECEの誤謬

ポジショニング:知覚の視点から見た活用の押さえどころより続く)



Contax T2, 38mm Sonnar F2.8 @New York City


Segmentation


これもかなり手垢のついた言葉ですが、今なお重要な概念であることは変わりありません。すなわち「市場における原子」の項で述べたとおり、市場というのは、たとえ同じものを使う人たちの集合だとしても均質ではない、という言われてみれば当たり前のことを明確に断定したからです。


特にうまくいくケースは、手法は様々ですが、ニーズ、購買行動に基づくセグメンテーションを行ったときであることは言うまでもありません。単に見えている軸で切っていってもうまくいかないことが逆にほとんど。そして非常にうまく切れた場合には、セグメントごとに大きくニーズが異なることが見えるだけでなく、結果的にブランドやプレーヤーごとのシェアも大きく異なるのが普通です。


そしてストレートなマーケティングをやっている場合には、このうち、どこであれば誰も正面から狙っていないのか、仮に狙っているとしてもターゲットの心の中で明確になっていないのか、更にそういう狙いがいのあるところのうち、自分たちの強みを生かすとどこが一番打ち出しやすいのか、を考えていくという手順になることは皆さんご案内の通りです。


そういう意味で上記、ポジショニングと表裏一体のように取り扱われることが多いのですが、問題は、そもそも全体をそれほど明確にもれなく切り分ける必要があるのか、ということと、狙いどころを発見するために、一体どのような軸で市場を切ったり、まとめたらよいのか見えないところにあります。かつては某大手コンサルティングファームジャーゴンであったはずのMECE (*)という概念がその卒業生の著作によって広まって久しいですが、どんな軸で切ったとしても実はMECEであり、MECEな市場の切り方など文字通りいくらでもあること、そして切れば切るほどインサイトなどなくなってしまうことなどは典型的な問題です。断言しますが、ただMECEに市場を切ったからというだけでインサイトが出ることはありません。本物のプロはインサイトに基づきMECEに切る、あるいはMECEに切った市場をインサイトで束ね直すから価値を生み出すのです。何らかの穴に対する洞察がない限り、いきなり市場を切ることなど意味がないことがこのコンセプト、アプローチの最大の問題でしょう。


むしろそういう「市場の穴」に対する洞察、野生の勘を何らかの方法で得て、それ以外は無視してもよいので、そのような市場を集めてくる、というアプローチこそが、本当は打ち出しどころを考えるために必要なのだと思います。そういう意味でこのコンセプトにはかなりの功罪が入り混じっており、本稿のテーマである「商品、サービスの打ち出し方」という視点で見ると、セグメンテーションは半分も答えを与えない、むしろ免罪符のようになっているケースが非常に多いと思います。じつは洞察のないセグメンテーションなど、経営を惑わせる分だけないほうがまだましのケースが多いのですが、、、。



三つのラダーとブレイクポイントへつづく)



関連エントリ

*:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive. = no overlap & no gap。日本語では順が逆になるが「抜けなく重なりなく」。ミーシー、あるいはミッシーと発音


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