From CT to DC (10) : ワシントン・モニュメント

ワシントン・モニュメントは妙に違和感のある建造物である。

宗教的であり、巨大であり、形が強烈すぎる。


Washington Monument, 旗の下にいる人達が見えるだろうか。

ワシントンの町は、高い建物を建てることが禁止されている。この辺り、皇居の周りと同じなのだが、その理由が冴えている。この巨大な槍を町のどこからでも「見える」ようにするためだと言うのである。まさにこれは神殿である。ワシントンは、世界のデモクラシーの中心を自称するが、実は宗教都市だったのである。ワシントンに来た人は、その形のせいか、場所のせいか、無意識に惹き付けられるようにこのモニュメントに向かう。

この町の機能的な、そして区割り上の中心は、キャピトル(議事堂)であるが、そこにはこれほどの求心力はない。町に集まった人たちは、砂糖に群がる蟻達のように、この塔に吸い寄せられ、触って帰る。ずっと高い空から見下ろすとかなり面白い風景だろうと思う。

そばに行って見上げる。鮮烈な印象が襲う。これはまさに、モノリス、ではないか。猿人達がキャーキャーいいながら、こわごわと近づいたあの物体そのものではないか、と錯覚する。2001年のモノリスは(奇しくも今年は2001年である)猿人に智慧を与え、人への進化を促したが、この現代のモノリスは一体我々に何を与えてくれるのだろう。

手を合わせるようなものではないのだが、異様な畏怖感と共にこの場を去る。


(March 2001)


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kaz-ataka.hatenablog.com