ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Between Neuroscience and Marketing

安宅和人: 脳神経科学とマーケティングの間に棲息

書評「静かなる革命へのブループリント」


α7, 1.5/50 C-Sonnar, RAW


我々の未来は、我々の意思が作り、我々の意思は感性、すなわち我々の現実の感じ方が生み出すことを改めて思い起こさせてくれる一冊。

献本をいただき、目を通したが、久しぶりにワクワク感を感じ、自分の深いところにあるものづくり、商品づくりの欲求がメラメラした。

実は僕は長い間、新商品開発をやってきた、かなりコテコテの商品開発野郎だ。身近な飲み物からハイテク商品までずいぶん幅広く関わってきた。その多くが幸い成功したが、随分力を入れたはずの商品が失敗する姿もかなりの数、これまで見てきた。それってなんだろう、と思ってきたことへの答えの一部がここにあると思った。

優れたマーケターは時代が身体の中に入っていないといけない。しかも、ほんの少し、先への展望がないといけない。それは時代への違和感であり、今起こっている話、話されている論説への違和感でもある。

そういうことをつい忘れてしまいがちなわけだが、それがやはり世の中を変え、新しいものを作るAでありZでもあることをこの本は思い起こさせてくれる。

参加者も豪華だ。トヨタ愛・地球博のi-unitを作った根津孝太さん、東大歴本研出身で現代の魔法使いと言われる落合陽一くん、ITビジネスの原理を書いた尾原和啓さん、クラウドワークス創業者の吉田浩一郎さん、加えて一度はお話ししたい猪子寿之さん、門脇耕三さん、駒崎弘樹さん。何よりインタビューアーの宇野常寛さんがやばすぎて相変わらず最高だ。笑

宇野さんには自分との対談でも大変お世話になったが、最後の章の落合くんとの対談は、稲葉ほたてさんとのマッチも抜群で素晴らしい盛り上がり。

トヨタ出身の根津さんの話からはもうなんだか訳の分からないレベルのinspirationを得た。次の一節を読むだけでも、根津さんがどれだけの思索と実践を積み重ねられてきたか容易に感じられる。そしてここにはシンプルでありながら深いJoy of Lifeがある。

その「自分はこう考えるから、こういうものを作った」こそが、文明でなく文化になる。だから、自分がどうあるのかを、僕は厳しく考えています。そしてやはり、僕ら自身がどれだけ楽しんでいきていくかこそがすごく大事だと思っているんです。(pp.23-24)

いつもいろんな世界の後ろで仕掛けまくる尾原さんからは相変わらずあやしすぎる面白さが漂っている。(前職の後輩でもあり、ちょっと身近すぎてあまりうまく評論できない)

人と仕事の関係性を作りなおそうという、吉田さんの話はいつもながらにすごい。問題を真正面から解こうというこの姿勢は、世界を本質的に変えていく人特有のものだ。

宇野さんの差し込みは私が言うまでもなく、相変わらず激烈で、シャープ。また独特のねじれがオモシロイ。その宇野さんの独自の角度がなければこの対談の面白さは50分の一ぐらいになったことは間違いない。自分なりの視点(上の「感性」)と世界観を持って論を深めることの醍醐味とワイルド感を味わいたい方にはこの本は絶品だ。

私自身は年始に偶然宇野さんと知り合ったのだが、なんとも言えない味付けと芸風にしびれている。対談中何度も、語り手には出来なかったレベルの意味合いの凝縮を宇野さんがして、語り手が息を飲むシーンが出てくるが、言語化困難なものをピンポイントで取りまとめる才能には毎度驚く。

ところどころ出てくる独自の視点も味わい深い。

怒りしか持っていない人は、他人からは絶対に感染してもらえない。一緒に戦ってくれる人を増やすには、やっぱりここに加わると楽しいんだと思ってもらう必要があるし、そのためにはまず自分が楽しくなければ、と僕も思う (p.102)

年末ぐらいに多分買って、積み上げてあった雑誌を2月ぐらいにパラパラめくっていたら、やたら面白くしかも本質的に80年代の芸能文化風景を俯瞰した記事があった。

これを書いた人は天才だ、と思ってみたら、なんと書き手が宇野さんでびっくりしたということもあった。

そういう宇野節を楽しみつつ、世界をまさに変えるべく色々仕掛けているワイルドな面々の感性に触れたい、そういう方におすすめだ。


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