ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Between Neuroscience and Marketing

安宅和人: 脳神経科学とマーケティングの間に棲息

不動産を借りて20年後に何が残るのか?

このエントリは、次の前エントリの続きです。そちらを読まれてからの方がずっと分かりが良いかと思いますので、お時間があれば、ぜひそちらをまずご覧ください。



Leica M7, 50mm C-Sonnar F1.5, RDPIII @Phuket, Thailand


前回の不動産のエントリについてのコメントなどを読んでいると、一定割合の人に根深い誤解があるように見えるので、少し書き足しておきたい。それは、「20年で切っているからこう見えるのであって、借りていると何も結局残らない」という意見だ。


結論から言えば、これは全くの誤解で、借りている場合は、出費が大幅に抑えられるので、生活での出費レベルが同じである限り、そのまとまった資金が本来残る。結局、20年経った古い家(すまい)とその余剰資金の間でどちらが良いのか、という話になります。


例として上げた三軒茶屋の70平米以上、賃貸であれば30万円、買うのであれば7500万円の物件のケースで、


不動産価値を含めても、買う方が20年間で約200万円損をする」


というのは、買う場合、「買った場合の不動産残存価値」分のキャッシュがあったとしても200万円、借りている人より使うお金の総量が多いと言うことを意味しています。「買った場合の不動産残存価値」と言うのは、このケースであれば、元々の不動産価値7500万円から、目減り分3300万円を差し引いたものですので、4200万円です。


つまり、「買った場合の不動産残存価値」が換金できない場合、財布の中は4400万円、借りた人よりも少ないと言うことになります。逆に見れば、借りている人には、その4400万円分多くのお金が存在しています。そして、これが買わないこと、お金を不動産の形で塩漬けにしないことで生まれた自由な老後の資金になります。


大幅に残るはずのその資金は、前エントリのフレームワークの中での実際のお金が動く部分だけに注目すると、出て行くキャッシュと運用益だけからも次のように簡単に計算できます。


(借りている場合のお金の流れ)

家賃の総和               △7800万円
頭金相当資金の運用益          +500万円
税金と保全コスト相当資金の運用益    +α万円


借りたケース出費計           △7300+α万円


(買った場合のお金の流れ)

頭金(6の一部)            △2000万円
ローン(1+5)            △7600万円
固定資産税(3)            △600万円
保全コスト(4)            △1500万円


買ったケース出費計           △11700万円


(出費の差額)

△7300ー△11700=4400万円(αを無視した場合)


なので、繰り返しになりますが、買えば、家が残るとかどうとかという議論はこのケースの場合、「4400万円の自由なお金」と「20年経った住まい」とどちらが良いのか、という話に言い換えることが出来ます.*1


ただ、これでは価値観の問題になり、比較のしようがないので、すべてお金換算して、比較できる状態に持ち込み、議論していたのが前エントリだったというわけです。


もちろん、ここでは、借りている人は、買っている場合と同じだけしかお金を使わない前提です。20年経ったら、家を借りるお金も買うお金もない、と言うのは借りることで生まれた余剰を勝手に使いきった時の話で、それは使っているお金が二つのケースで異なる訳でもう既に比較になりません。


ということで、こういう検討の結果、仕事がなくなった瞬間にデフォルトを起こすリスクを抱えて変にローンと共に生きるよりも、このように、買っても特に明確な得をしないような相場の時には、その間、貯められるだけためて、臨時のリスクにも備えつつ、それで引退時に何か適切なものを即金で買うのが正しいのではないかと、僕は自分の個人のケースとして思うようになりました。


もちろんお金はあるので借り続けるのもありですが、多分ライフスタイルが変わるので、同じような物件を借り続ける必要もなくなるでしょう。


みなさま、いかがでしょうか?

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この誤解が解けたと言う前提で、あと残された課題は、次の5つになります。

  1. 一体いくらの家賃はいくらの購入物件とバランスするのか(現在の金利状況で。マンションと戸建てそれぞれで計算が必要)
  2. 金利、インフレ率が変わった場合には、どのような辺りでバランスするのか
  3. ローン期間を変えた場合にはどこでバランスするのか(その人の人生プランの節目をどこと考えるのか)
  4. その土地のその広さの購入候補物件は、この土地の場合、上のバランスをベースに見ると、借りる側とバランスしているのか、あるいは安いのか?(相場観、、、今回物件候補をいくつか見て大まかにジャッジした部分だが、本来個別具体的に行う必要がある)
  5. バランスしている、あるいはある程度安い場合、20年なり何なりの塩漬け的なローン期間をどう考えるのか?つまり、支払い義務が固定された、自分の職業、景気、インフレ率などの変動要因(つまりリスクへのコミットメント)を自分としてどう考えるのか?


実はこの大半を僕は、僕の場合のケースで個別具体的に計算、検討してみました。総合として結構な気付きがあったので、みなさまもそれをざっくりでも良いからやってみてはいかがでしょうか?




参考エントリ

ps. 前エントリと同様、業界の人間でも、専門に研究したことのある人間でもない門外漢なので、根本的なエラーを起こしている可能性があります。あくまで個人の暇を見て書いているだけのブログなので、丸ごと真に受ける人もいないと思いますが、そのような気付きがあれば、大変助かるのでぜひお知らせください。



*1:インフレになれば、ローン支払いが増える一方、借りている場合の余剰資金運用益が大きくなるので、支出の差(借りている場合の優位性)は更に相乗的に増えます。その時にもしも土地がバブル的に上がっていれば、その残った「20年経った古い住まい」の価値が上がるので、うまくやれば、支出の差を埋めてくれるかもしれませんが、これはまた異なる変数と考えるべきだと思います。