米国横断フォトエッセイ7 : ジョシュアツリー(Joshua Tree)

Joshua Tree、日本語読みでヨシュアツリー、すなわちヨシュアの木がどうしても見たかった。


ネヴァダからカリフォルニアに向かっていた。砂漠を越え、山を超え、そして砂漠を越えた

ネヴァダは途方もない国だった。華氏で120度。100度を超すと風邪だというぐらいだから、きっと摂氏で言えば40数度という気が遠くなるような暑さだった。日陰ですら肌がけいれんした。モールでもあらゆるところで3メートルぐらいの高さから、止めどなく霧状の水をまいていたが、あまりの乾燥で、人に届くまでに全て乾いていた。


逃げ出したかった。

わずか200数十マイル向こうに、海がある。太平洋がある。そしてカリフォルニアに入ればジョシュアツリーが見えるはずだ。そう思って、ひたすら走り抜けていた。

50マイル(約80キロ)抜けても殆ど同じ荒れ地が続く。耳の中をU2のこだまのようなイントロが鳴り始める。

ここはまさに名前などない土地だ。Where the Streets Have No Name . . .


フーバーダムを越える。そう巨大な人造湖を抱えるあの歴史的な水力発電所だ。走り続けて来たので、休憩でおりる。と、七つの娘が鼻血を出した。疲れている上、この暑さじゃ無理もない。


屈伸だけして、再度クルマに乗って走り出す。


しばらくして,ついにカリフォルニアに入る。

最初はそれほど変わらなかったが、暫くすると、明らかに異様な、木なのか、サボテンなのか、シュロなのか、それらの三位一体と言うべき、怪物がまばらに見え始める。Joshua Treeである。


群生している野生の地で降りることは、時速80マイル(約130キロ)近くで駆け抜けるハイウェイだけにかなわず、なかなか近づけない。


気がつくともう夕方だ。

最後のチャンスと、あるExitで降りる。

脇に抜ける。


あった。



Leica M7, 50mm Summilux F1.4, RDPIII @ near Joshua Tree National Park, CA


夕日の絢爛が惜しみもなく広がっている。その中にそびえ立つ、ジョシュアツリー。

神々しさに思わず手を合わせる。

その日の円は完結した。


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