ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Between Neuroscience and Marketing

安宅和人: 脳神経科学とマーケティングの間に棲息

Hello! I am back! (probably)


Leica M7, 50mm Summilux F1.4, PN400N


気がついたらたいしてモノを書かないまま何ヶ月かが経ってしまいました。登録して頂いていただいてる読者諸兄姉(みなさま)、ゴメンなさい!


最後に書いてから二ヶ月。


色々書き物をしていたのですが(そしてかなり書いていながら、今もまだケリが付いていないのですが)、このまま書かないと、このブログ、書かないままになってしまいそうなので、何か自分のためにも書いていきたいと思います。



思い起こせばブログを書き出してからちょうどこれでほぼ一年。あっという間でした。


最初の二ヶ月ぐらいはあふれんばかりに書きたいことがあって書いていたけれど、これがもう内容がハードコアだったからか全然反響がなくて、さすがにちょっと参ったりした。笑


せっかくなのでちょっと振り返ってみたいと思う。

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去年は自分の人生にとっても結構な節目の年で、長年つとめたプロフェッショナルファームを卒業し、トップマネジメントに対するサポートという意味では、これまでと一見似ているけれど、それがなんというか平行して何十倍もの密度で起こる経営のつなぎ目のような仕事をするようになった。


それまで(前職)でも、三つ四つぐらいは常にon-goingのプロジェクトを持っていたので、ある程度以上の仕事のcomplexityにはなれているつもりだったけれど、平行して、クリアにケリが付かない、そしてつけることが必ずしも正しい訳ではないことが大量にあると言う状況に最初は面食らった。正直、知恵熱のようなものが出たし、当初、体調もすばらしくは良くなかった。今も必ずしもベスト順応している訳ではないけれど、それが望ましい訳でも、期待されている訳でもなく、ある種の平衡状態に変化しつつも来ている気がする。


同じく昨年、子供も学校に入り、すくすくと育ってくれていてとてもうれしい反面、三つ、四つの時のような無邪気さがだんだんと大人びてきてさみしかったりもする。ただ、やっぱり疲れて帰ってくると、当然のようにもう寝ていたりするけれど、顔を見ると本当にほっとする。そして、時たま親にしみじみ感謝する。


このバタバタしているタイミングに平行して、40になって、世の中平均的には人生の半分が過ぎたんだなと思って、自分はどれだけのことを残せたのだろうと思うこともある。ただ、いくつかの歴史に残るようなヒット商品や事業を産み出す過程に直接的にかなりディープに関わることが出来たことなどを考えると、仕事という面ではそれなりに充実していて、毎回ギリギリだったりしたけれど、そうして命を削りながら、限界に挑んできたので、それほど悔いはないなと思う。今死んじゃうと遺産らしい遺産が何もないのが、家族に申し訳ないとは思うが、、それはそれで、ここから先少しでもなんとか前に進んで、あとで振り返ったとき、あの頃も本当に楽しかったと、家族や周りの人に思い出が残るとそれでうれしいなと思う。


実ははたちの頃、一度だけ肺炎にかかって一週間近く入院したことがあって、毎日39度9分とかという体験したことのないような熱が連日でて、点滴を毎日四本だとか六本だとか打たれてふらふらだった。小中高無欠席というような健康体で育った僕は、39度以上の熱に記憶する限りそのとき初めてかかり、普通の人から見たらばかな話だけれど、ホント死ぬかと思って、看護婦さんに「僕はこんなところで死ぬわけにはいかないんだ」(まだなにもやっていなくて死ねないから。笑)、、、なんて本気で叫んだりしたのが懐かしい。あれから20年あまりが過ぎ、それなりによくがんばったよな、と思う一方、沢山のすばらしい人たちに出会い、助けてもらってきたこと、際どい時に天に助けられたなと思ったことが何度となくあったことを本当に有り難く思う。

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このブログのタイトルの通り、サイエンスとマーケティングを行き来する生活を送ってきて、今はマーケティング、そしてその延長のマネジメント側にかなりどっぷり浸かっている。僕の専門のニューロサイエンスは、若干怪しげな脳科学と言う言葉とともにかなりメジャーになって、とりあえず人権が生まれたカナ、という感じで、これはちょうど僕が高校から大学に行く辺り(=25年ほど前)の分子生物学ブームに近い状況なのかなと思う。


ただあの頃の分子生物学ブームと大きく違うのは、ニューロサイエンスは、まだそれほどの成熟段階にはない。分子生物学は当時、DNA, RNA, proteinの絡み合いとそこから生まれる遺伝情報の連なり、ダイナミズム、それらが使われて細胞が専門化し、成熟化していく過程の大筋が固まって、分子生物学から、細胞生物学、あるいはガン遺伝学などなどに一気に向かおうという次のフェーズに明らかに突入した段階にあったからだ。


門外漢の人には信じてもらえないかもしれないが、領域個別の機能や興奮、情報伝達パタンは愚か、神経一つのレベルの神経伝達の現状すら未だによく分かっていないことが多い。例えば神経の多くは大量に分岐しているけれど*1、それに全て信号が流れる訳ではないということだけ分かっていて*2、それを正しく説明するロジックは我々にはまだない。つまり脳のモデル化以前に、たった一つの神経のシミュレーションすらまだ我々には出来ない。


ホジキンとハクスリーの偉大な成果から飛躍的な成長は出来たと言えば出来ているが、第一段階の最も深い質問にはかなりの部分、まだ答えられていない。むしろ相対性理論量子力学の初期時点で、その中身が物理学者も理解しきれていない段階で大騒ぎしていたのに近いのではないかと思う。人間、いつも謎だとか、ターゲットとすべきゴールがないとダメになってしまうというか中だるみしてしまうので、そう言う意味で分けの分からない物の筆頭の一つとして我々の脳、神経系についての関心が高まっているのであれば、それは素直で素敵なことだとは思う。


マーケティングについては、この国は少なくともまだまだだと思う。マーケティングサイエンスの専門ジャーナルはそれなりに欧米に存在しているが、その中に日本人の研究者の論文を見ることは少ない。ブランドの構造をどう作るかというような、なじみ深い問題一つを取ってみても、アナリティカル(分析的)にその課題を切り分け、議論できる人がほとんどいない。その上で、それを同じく分析的に意思決定しましょうと言っても、そのアプローチのアイデアすら湧かない人が第一線の人でも大多数だ。だから、ファクトとロジックがないために、すぐに宗教間の戦いみたいになってしまう。これは若い人に取っては大きなチャンスフィールドですね。間違いなく。

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ブログの話に戻ると、秋になって書いた研究の本質的な流れに関する話と、そのあとぐらいかな書いていたアカデミア関連の話にそれなり以上の反響があり、この辺り、はてなの読者層がたまたまそういうのに刺さりやすいということがあるかと思うけれど(例えば、アメブロとかヤフーブログでヒットしたとは到底思えない。笑)、それに加えてやっぱり自分がこういう自分が若かった時だったら知っておきたかったと思うようなことを伝える意志を持って書いていたことが大きかったのだろうと思う。


休載中に書いた大学の経済的なストラクチャーの話など、ホント長年、誰に話しても知らない、聞いたことも自力で調べたこともない(留学経験者も含めて)ということが続いてきたので、書けてよかったなと思う。これで啓蒙が進んでどこかに誰かなにかを書く際には、このブログが引用されたりすればとてもうれしいと思う。



で、今後ですが、春先はアカデミア関連でかなり問題意識が先鋭化していたのですが、今の瞬間はそれほどでもなく、ニューロ関連になるのか、マーケ関連になるのか、はたまた草なぎ君みたいな社会観察系になるのかよく分かりませんが、何かピンと来たら書いていきたいと思います。


本エントリのタイトルを書いた時は、「明確にこれを発信したい!」と思うほどの意志がない状態でここから先続けられるかな、と思いが立って書きましたが、なんとか書いていけそうな気がしてきました。


今後ともヨロシクです。今日はまだ入院開け患者みたいな状況ですが(笑)、徐々に出来る範囲でパワーアップしていきます。


何かこんな感じのことでどう思いますか、とか、こういうことについて書いてほしい、的なことがあれば、お気軽にコメントなど頂ければ幸いです。出来る範囲で出来るペースで対応します。


それではまた!


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*1:何もかも調べたことのある人がいる訳ではないので、大まかだが、脳の中の多くの神経だと1000〜5000程度の枝があることになっている

*2:生理学をやっていない人はプロのニューロサイエンティストでも知らない人がいる