Brazil 1より続く
熱帯特有の湿度の高さが膚に食い込んでくる。白タクの運ちゃん達が立ちはだかり、どこに行くんだ、乗らないかと誘いをかけてくるのが見える。彼らには目を向けず、パブリックトランスポーテーションのコーナーを探す。英語など全く解せず、ブラジル語(ポルトガル語のブラジル版)しかしゃべらない彼らに身を任せるというのは怖い。バスは、バスはと叫んでいると、誰かがあそこだ、と指を指す。うろついていると、どこに行くんだ、ホテルトロピカルだというと、あの男に聞け、と誰かがいう。聞けばその男は珍しく英語を話し、どうもそのホテルに向かうようだ。訳も分からずその男のバスに乗る。
マナウスに着く。
マナウスは、アマゾンのジャングルのど真ん中に突然現れる都市だ。緯度は南緯三度。ほとんど赤道直下である。日は六時に昇り、六時に沈む。
サンパウロを出た飛行機から下を眺めていくと、しばらく広大な区画でありながら、円の形をしたのとか、三角形のものだとか、四角形のものだとか実に個々は整然とした形ながら、全体としては無秩序なリズムを持った耕作地、あるいは牧場が続く。それが気が付くと見渡す限りのジャングルに変わる。そうやってずっと何時間か見ていると、唐突にうねりながら伸びていく大きな川(複数)が現れる。蛇行といい、サイズといい、丁度ニューオリンズで見たミシシッピ川を思い起こさせる。すると不意に飛行機の窓からでは、到底、見渡すことの出来ない巨大な水面が現れる。
アマゾンである。
しばらくすると、その対岸とともに大きな町が現れた。これがマナウスである。
ブラジルの国土は日本の二十三倍。アラスカを除いた合衆国とほぼ同じサイズである。その上半分はアマゾン川の流域であり、その流域ほぼ全てがジャングルである。
アマゾン川の流域はその広大なブラジルに収まり切らず、南米大陸の四十パーセント(ブラジルの全土に匹敵)を占める。僕が高校の地理で習ったときは、流域面積ではアマゾン、全長ではアフリカのナイル川が世界最大と教えられたと記憶するが、一年に四国だか九州一つ分だかというサハラ拡大の影響がここにも及び、ついにアマゾンは、流域でも、全長でも世界最大の河になったそうである*1。自然の全てを体現したこのアマゾンを眼前にしつつ、また一つ地球の一部の死を思い知らされる。
写真説明(クリックすると大きくなります)
1. 飛行機から見た農地。実に自由かつ幾何学的
2. 河口から1600キロも上がったところでのアマゾン河に流れ込む支流の支流。とは言っても銚子の利根川よりは大きい。ほぼニューオリンズで見たミシシッピサイズ。川面に映るのは大空。
Brazil 3へ続く
(July 2000)
*1:河の全長については当時ブラジル人から聞いた話であり要検証