ブラジル

Brazil 26:Ciao! (最終回)

(Brazil 25より続く) 旅立ちの日が来た。サンパウロのきれいなシティ・ホテルで朝ご飯を食べる。パパイヤがおいしいのは相変わらずだが、なにやら空虚である。物理的にはまだブラジルだが、ここはもうアマゾンではない。既に体の半分はニューヨークに、ア…

Brazil 25:ブラジルで出会った食べ物たち(2)

(Brazil 24より続く) シュラスコブラジル独自のバーベキュー。ステーキといった方がいいのかもしれない。サーベルとでも呼ぶべき巨大なナイフに肉塊をいくつも刺し、その周りに岩塩をつけて、時間をかけて焼く。焼くときは、大きなオーブンに十本も二十本…

Brazil 24:ブラジルで出会った食べ物たち(1)

(Brazil 23より続く) 魚に引き続き、野菜だ、果物だ、スパイスだ、と見て回っているうちに、ブラジルで口にした物の一つ一つが味蕾の上に立ち戻って来ては去る。野性味に富み、精妙で、強く、それでいてやさしい。ここで、これまで触れることの出来なかっ…

Brazil 23:マナウスの胃袋、、、メルカド

(Brazil 22より続く) マナウス最終日、朝。メルカド(市場)へ出向く。どんな町でも、その匂いを知りたければ、その本当の力を知りたければ、メルカドに行かないといけない。築地を歩いたことのない人など、東京を知っていると言えないのと同じだ。マナウス…

Brazil 22:アマゾンでの宴の終わり

(Brazil 21より続く) 舟で帰る途中、ある立木の奥に立ち寄る。丸太の柱が何本かあり、その上に青いプラスチックのテント地が張ってある。マナウス周辺の釣りバカ達が夜を徹して釣りに来るときに泊まる場所らしい。約五メートル四方。しかし、こんなところに…

Brazil 21:緑と金の跳躍

(Brazil 20より続く) 「オパ!」おっさんが声を上げる。竿先が水面に吸い込まれている。ど素人のうちのかみさんにまで釣られ、これまで面目丸つぶれだった彼にも遂に僥倖がやってきたようだ。強い引きだ。糸を出したり巻いたりしたりしながら格闘している。…

Brazil 20:金色のトクナレ

(Brazil 19より続く) ピラーニャのものすごさに唖然としているうちに、あの重戦車のようなプレタとは全く異なる、高レスポンスカーのような引きが唐突にやってくる。グーン、グン、と大きなリズム。それを見ておっさんが、「タ・ク・ナ・レー」と言う。ホン…

Brazil 19:ピラーニャの実力

(Brazil 18より続く) 僕にとって記念すべきその場所はどうも他の連中のお気に召さないようで、自分たちにツキがないと見たのか、まだ大して頑張っていないのに移動だという。まだ釣れるよ、とぼそっと言うが、三(二?)対一ではかなわない。有無を言わさず…

Brazil 18:フィッシュ・オン!

(Brazil 17より続く) 魚だ。ヒットだ。フィッシュ・オンだ。「I GOT it!(かかったぜ!)」そう叫んで糸を巻きにかかる。ドラグはさっき簡単に調整しておいたが、再度少しだけゆるめる。とにかく大切なのは糸をたわめないことだ。三本針といえども、一本しか…

Brazil 17 : 到着、第一投

(Brazil 16より続く 船首にすわったガイドのおじさんが指をさす。それを見て後で舵を切っている土人の彼がスピードを落とす。近づいたようだ。ここまでの疲れ、不安、倦怠はたちまち消える。心が躍ってくる。深い深い立木の群の奥のそのまた奥、そこに何本も…

Brazil 16:海原のような湖

(Brazil 15より続く) この湖は大きい。しばらく船に乗って走り続けているとそれがひしひしと伝わってくる。もう何十分乗っているが、変わらず大海原の真ん中である。こんな小さな船でこんなところでひっくり返ったら、大変だぞ。泳げるのかナ。そもそもピラ…

Brazil 15:アマゾンの夜明け

(Brazil 14より続く) 明日の朝は早い。'The Little Prince'(「星の王子様」)を読んでいるうちに眠りに落ちる。この徹底的な静けさの中にいると、王子様が降りてきて、僕に話しかけてくるのが聞こえて来るような気がしてくる。「本当に大切なことは目に見え…

Brazil 14:音楽、人種、リズム

(Brazil 13より続く) 計画にめどが付くと途端に腹が減ってくる。バッフェに入る。奇怪な物体が皿の上に寝ている。どうも魚らしい。馬を上から叩きつぶしたような顔をしている。口は掃除機の吸い込み口そっくり。何だこれは?と聞くとただ一言、スルビン、と…

Brazil 13:釣行に向けて

(Brazil 12より続く) マナウス到着当日、夕方。河に圧倒されたまま、部屋に戻り、マナウスでの計画を練る。具体的には、アメリカから担いできたラフガイドなるブラジル案内本を開き、英語の通じると思われるツアー会社に片っ端から電話をかける。目的は、と…

Brazil 12 : 食べることと出すこと

(Brazil 11より続く) 少し、生きることの本質的作業について取り上げたい。食べることと出すことである。ブラジルに来てから何がうれしいと言って食べ物が本当にうまいことである。何を食べてもうまい。どこで食べてもうまい。これは本当である。空港のレス…

Brazil 11 : 悪魔ののど笛

(Brazil 10より続く) 合流地点に達する前、甲板の上をうろついているうちに、ロンドンからの三人組と仲良くなる。二人がブラジル人、一人がイラン人。遊び仲間でヴァケーションのようだ。珍しく英語を話す人に会い、お互いうれしくなって盛り上がる。とても…

Brazil 10: カンジル

(Brazil 9より続く)カンジルという魚がいる。別名、食肉どじょう。本によってはカンジェロともカンジロとも書いてあるが、私の耳で聞く限り、何度耳にしてもカンジルーとしか聞こえなかったので、カンジルと書くことにする。なおアマゾンの魚の多くはほとん…

Brazil 9:河の上のみやげ屋

(Brazil 8より続く) リオ・ネグロことネグロ河は本当に黒い。船の水流に揉まれている水を見ていると、まるでコーラの原液をかき回しているように見える。しかし、この上流には何にも産業らしい産業はなく、ひたすらジャングルが広がっているだけである。大体…

Brazil 8:アマゾンのジャングル開発

(Brazil 7より続く) あまりにもマナウス周辺のジャングル開拓が急速に進んでいるために、この辺りの気象も劇的に変わりつつあるとガイドは嘆く。何年か前には、瞬間風速ではあるものの53度という気温を記録したという。老人や小さな子供などは空調なしではひ…

Brazil 7:ガイドのおっさん

(Brazil 6より続く) ガイドのおっさんは見事な英語を話す。大半を占めるブラジル人客相手にポルトガル語でいったん説明したあと、目の前に座っている僕らのために英語で要約版を話してくれる。後ろの方にいるイタリアから来た初老の夫妻が、イタリア語でもや…

Brazil 6:アマゾン河ツアー

(Brazil 5より続く) マナウス到着翌日、手始めにアマゾン川とその流域のジャングル・ツアーに参加する。もとより見ることが全てなので、説明には期待しないつもりだったが、聞くとガイドは英語も話すというので言葉で干上がった僕は思わず期待してしまう。マ…

Brazil 5:ブラジルのことば

(Brazil 4より続く) ブラジルに来て驚くのは英語を話す人の少ないことである。町を歩く人はまず理解しない。観光客の多いはずのエリアの食事屋や店ですら、全く理解しない。水や塩という言葉すら通じない。自然、ブラジル語を覚えることになる。水はアグア、…

Brazil 4:サンパウロ

Brazil 3より続く読者諸兄姉のご賢察通り、僕らは直接マナウスに入ったわけではない。ニューヨークからサンパウロに入り、その後、フォス・ド・イグアスを回った後、マナウスにたどり着いた。サンパウロは南米の首都である。人口千六百万を抱え、ブラジルのG…

Brazil 3:リオネグロ

Brazil 2より続くホテルに着き、部屋に荷物を下ろすと、何はさておき、その前に広がるネグロ川を見に出る。ホテルの前の小さなジャングルをくぐり川辺に出る。息をのむ。広い、実に広い。聞くと、幅が十数キロあるという。河口から千六百キロ、日本でいえば…

Brazil 2:マナウス

Brazil 1より続く熱帯特有の湿度の高さが膚に食い込んでくる。白タクの運ちゃん達が立ちはだかり、どこに行くんだ、乗らないかと誘いをかけてくるのが見える。彼らには目を向けず、パブリックトランスポーテーションのコーナーを探す。英語など全く解せず、…

Brazil 1:出発

(Brazilより続く)二月某夜、ブラジル行きを決意する。滅菌されきった自然や、芸術的といっていいほど単純なアメリカ料理、無理して強がっているアメリカに疲れ、もっと猥雑で、自分の手と足を使い、地べたの上にちゃんと立って生きている人たちに会いたい…

Brazil (ブラジル訪問、探検記)

アメリカで研究していた2000年当時、ブラジルに旅に行って、随分鮮烈な経験をしました。まだブログというものがどうやってたてたら良いのか良く分からない時代で(cnetみたいなバックアップがないと出来ないのかな、と思っていた)、友人、知人たちに日々旅行…