現在の脳科学、脳神経科学で脳の活動はどこまで分かるのか


Contax T2, 38mm Sonnar F2.8 @Paris


先日、何気なくclarificationのつもりで書いたニューロサイエンス、脳科学、あるいは大脳生理学についての説明))に思いのほか反響があったので、専門的な生理学的研究法に関心を持つ人のために、数学などを使わずに、もう少しだけ、深めの議論をしておきたいと思う。


実は私のいたイェール大学は神経活動を調べる方法(神経生理学)開発のメッカの一つで、パッチクランプ(91年ノーベル賞)、オプティカルレコーディングなど数多くの画期的手法を生み出してきました。当時、細胞分子生理学教室に研究の籍を置き、これらの手法の開発者(Dr. Fred Sigworth, Dr. Larry Cohen) から直接的に指導を受けながら、限界を超える新手法の開発に取り組んでいたのですが、その中から学び、理解してきた現在確立された主たる手法の強み、限界についてのエッセンス部分を残しておきたいと思います。(一応、まだNature, Nature Reviews Neuroscienceは購読してざっと目を通しているつもりですが、時代的なアップデートなどがあれば遠慮なくコメント欄に補足ください。)


特にお伝えしたいのは、どうもあまねく存在している我々が持つ脳神経系の活動を調べる方法論への過信です。実は21世紀に入った今も、我々人類は脳、神経系の活動を理解するためにそれほど多くの方法を持っていないのです。またそれほど画期的な方法があるわけでもないということは、まず伝えておきたいと思います。



(1)脳を開けずに活動を見る方法


古典的にはEEG (Electroencephalography: 脳電図)を見るという方法がありますが、これは皆さんも映画などで見たことがあるとおり、脳を見ているというより、脳の表皮から見た電位の変化を見る方法です。従って、時間的にはかなり細かく見れるが、空間的な解像度は「ものすごく」低い。いったい直接的に何を見ているのかすら良く分からない。てんかん(seizure)のような爆発的な活動があれば、波がどこから来たのかだいたい分かるが、それ以上でも以下でもない。一つのスポットが見ている情報は億単位のニューロンの活動の総和と考えるべき。


では近代的な手法は?、、、ということになるとおなじみのfMRI、PETということになる。



(2)へ続く



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以下、向学心に燃えるあなたのために超ハードコアな関連「基本」図書の紹介。ここに書いてある程度のことが分からないと、神経生理学で論文を書くのはもちろん、読んで正しく理解するのすらかなり困難です。(投稿してもレビュアーの質問にすら答えられない。、、、そもそもその前にPh.D.の資格試験Qualifierすら通らない。笑)左の本のパッチクランプ手法の説明は鍵になる部分はほとんどが上のFred (Dr. Sigworth) が開発者として書いています。