シゴトの未来


Leica M7, 1.4/50 Summilux, RDPIII @Shelburne museum, VT, USA

さすがに人生の半分ぐらいまできたと思われるkaz_atakaです。

表題のテーマでもうこの3年ぐらい食傷するぐらいの数のインタビューや取材を受けてきました。正直、僕の周りでは完全にdone issue(ケリが付いた話)なのですが、今キャズムを超えたと思われる一般メディアから急に色んな話が来るようになっています。

以下は、これでこの話題についてはもう打ち止めにしようと思って受けたリクルートワークス研究所のインタビュー記事です。これほどシゴトというものに正面から向かい合った議論をした記憶があまりないのと、限定版的な冊子で送られてきたこと、ウェブに上がっていないことを踏まえ、ここに手持ち原稿から転記して上げておこうと思います。ウェブ掲載が始まったら下ろす可能性があります。FYI(太字は筆者)

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Q1. 人工知能の進化などにより、仕事がなくなるといわれています。どうご覧になっていますか。

A1. 仕事はなくならないですよ。

データやAIの力を活用して、いろいろな業務が自動化されることは幅広く大量に起きますが、それと仕事がまるごと消えることとが混同されています。「あらゆる仕事でデータやAIの持つ力を使わない人と解き放つ人に二極化する」、これが本当のところ起きることです。むしろ自動走行車の利活用やメンテナンスのように、更に新しい仕事が数多く生まれる可能性が高い。AIが仕事を奪うと思っている人はAIとは単にイデアにすぎないこと、どのように作られるのか、その結果起きること、そして我々の仕事の本質をちゃんと理解したほうが良いです。

この変化の第一フェーズ段階にある現在では、データやAIの力を解き放つための能力を持つ人が大きく不足しています。また、目指す人はどこから手を付けたらいいのかわからないのが日本の現状です。ここに一石を投じようと、データサイエンス協会を何人かで立ち上げ、これまで必要なスキルを整理し、発表してきました。

この変化は、多くの方の想定よりも早く進展し、指数関数的に起こります。1900年のニューヨークで撮られた写真には多くの馬車が写っていますが、1913年にはほぼすべて自動車に置き換わっています。1908年にT型フォードが発明されてからわずか5年の間に実際に一気に変わったのです。よく馬車に乗っていた人はどうなったんだという話がありますが、簡単です。クルマに乗ったんです。(笑)そして、人間はそれに対応できてしまうのです。社会は人間が対応できるように変わるので心配はいりません。*1

全体観をいえば、仕事がなくなるのではなく、データやAIの力を使う人と使わない人に二極分化する、それは予想以上のスピードで進むが、人間はそれに対応できる、そういうことです。

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Q2. 想定以上の速さで変化する世界において、我々はどのように仕事をすればよいのでしょうか。

A2. 仕事というのは楽しいものです。世の中を変えること、役に立つことそのものですから。しかもお金をもらえる。人間が生み出した最大の「虚構」は仕事です。普通に生きていれば、少しは仕事したい、つまり世の中で意味のある存在でありたい、と思うでしょうし、仕事の喜びは残り続けると思います。それを追求する中で、データやAIを使い倒すべきです。

仕事の価値を労働時間で測る習慣は是正されるでしょう。肉体労働まで含めても投下時間と生み出す変化量、バリューが合致しない仕事がすでに大半だからです。ここで言っている仕事のバリューとはむかし物理で習った「力×距離」そのものです。力は「質量×加速度」。つまりどれだけ重いものをどれだけ勢い良く変化させたかです。どれだけ頑張ったかではありません。もちろんその場にいること自体が価値がある仕事は時間ベースの仕事として残りますが、経済原理でみて意味をなさないものは淘汰される、それだけです。

AI×データのように技術的な革新による変化は自然とそうなるし、そこでビジネスをするならば、それに合わせざるを得ないのです。変化するかどうかはイシューではないのです。変化は必然なのですから。本当のイシューは、その変化をどうやったら早く起こせるのか、だと思いますね。

Work Model 2030を、2030年の完成形ととらえ、現在起こっていることから推定しようとするのはほとんど無意味です。変化を楽しむ中で、この世の中がどういうフェーズで変わっていくのか、それをどれくらいのスピードで起こせるのかを考えるべきです。

大きな果実をつかもうと思うなら、その変化に先駆けて動き、イノベーションを起こさないといけません。しかし、現行の日本の仕組みは、基本的にホワイトリスト方式です。出てくるものをリスト化して、それぞれに法律で対応する。これでは新しいものは生まれません。前例がないからイノベーションなのですから。(笑)新しいものはルールのないところから生まれてくる。たとえば、検索です。つい最近まで法律的にはかなりグレーな存在でした。

グレーゾーンを突破する力は、ユーザーにあります。ユーザーが価値を見出せば、社会は勝手に変わるのです。社会は適応するように作られた虚構の塊です。現実の前にはルールは変わるのです。例えば、いまそこにゴジラが現れたら我々は対応するじゃないですか。必要に応じてどんどん変わっていくのです。検索の価値は誰にも止められないくらい強くなった。著作権等の問題は山のようにありますが、すべての人が検索に依存するようになったとき、この問題を議論することの価値がなくなったのです。そうやって世の中は変わります。

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Q3. その変化を起こすにはどうすればよいでしょうか。誰が変化を牽引するのでしょうか。

A3. 新しい変革は、明治維新終戦後のときもそうですが、10代と20代、30代前半までの人が起こします。世界の歴史上革命的な変化を40以上の人が引き起こしたり、やり遂げたことはほとんどありません。

年配者のできることは、規制なども含め彼らのじゃまをせず、何か面白いことをしている若者に、信用を与えて、お金を出し、良い人を紹介する、この3つに尽きます。勝海舟みたいな仕事をしてほしいのです。維新後の開国のときや、終戦直後にはそういう人が山のようにいました。新しい変化は年配者が起こせる代物ではないのです。時代の空気を吸った人がやるしかないのです。

この社会がどうやったら生き延びられるかを考えなくてはいけません。どうやって経済を伸ばすか、社会を良くできるか。現在の日本の社会は(略)推進するエンジンを失いつつあるのです。漫然と2030年を迎えるのでは遠すぎるのです。

あらゆることを提言して、仕掛け、考えた人が実行する。こういう取り組みを激増させる必要があります。この中で自然に生き延びた人がまた未来を拓いていきます。どんどんやって、当たったものが巨大進化をするだけなのです。どれが当たるかなんて誰にもわかりません。だからいろんなトライをしたほうがいいのです。

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Q4. テクロノジーの大きな変化に向けて、何をすべきでしょうか。また、変化を起こすときに指針となるものはありますか。

A4. 社会全体としてみれば、データの持つ力を解き放つ、これがまず第一です。そのためにはデータサイエンティスト協会でまとめているとおり、情報科学(データサイエンス)、それを実装し運用する力(データエンジニアリング)、実課題につなげて解決する力(ビジネス力)の3つが必要です。

さらに二つ、一つは、エンジニアリング層のスキルの根本的なリニューアル、具体的には、SIerエンジニアからビッグデータソリューション系エンジニアへの転換、もう一つは、ミドル層・マネジメント層のスキル刷新です。

指針、、、世の中全体の大きな課題をAIやデータの力を使いつつ自分ならではの方法で解決する、あるいは役立てるようなことを考えるのが王道だと思います。幸い現在の社会は問題には事欠きません。温暖化、エネルギー不足、少子化、巨額の年金と医療費、過疎、時代に即していない教育、グローバル社会の分断などなど。

仕事の選び方としては、みんな、生命の原点に戻ればいいと思います。危ないところから逃げて、自分らしく自分がユニークに生きていけるニッチ、生活空間、に行く、この繰り返し。失敗したら滅びる、それが生命の原点ですよね。経済原理ももとを辿れば、自然淘汰の世界です。

人間は生命がかかれば頑張る生き物です。そういう風にできているのです。変化に臆するのではなく、生命の力を信じるのです。人間はいざという時にはできるのです。我々は生命ですから、大丈夫です。

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以上です。

悲観論はどうでもいいので、ぜひ未来を揺り動かしていきましょう!

Let's rock the world together!!

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ps. ご参考までに比較的最近のものを中心に代表的な関連掲載記事(自分が受けたもの)へのリンクを載せておきますね。

“シン・ニホン” AI×データ時代における日本の再⽣と人材育成 (2017/2)
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shin_sangyoukouzou/pdf/013_06_00.pdf

AIで仕事はなくならない ―― なぜか過剰被害妄想の日本の本当の危機 (2017/2)
https://www.businessinsider.jp/post-827

経験値だけで飯を食べている人は 人工知能によって出番がなくなる(2017/1)
http://www.dhbr.net/articles/-/4630

ヤフーCSO安宅氏が解説する「AIの正しい理解」(2017/1)
https://industry-co-creation.com/special/8175

人工知能はビジネスをどう変えるか」(2015/11) > 以下のDHBRの一章

人工知能―――機械といかに向き合うか (Harvard Business Review)

人工知能―――機械といかに向き合うか (Harvard Business Review)

AI×データはビジネスをどう変えるか (2015/10)
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shin_sangyoukouzou/pdf/002_06_00.pdf

*1:言うまでもありませんが、同じことをただ続けたい人、文明の恩恵を受けたくない人、たとえば電卓やコンピュータが生まれても使いたくなかったような人の仕事がなくなるのは当然です。