空気に飲み込まれたくない中学生、高校生のみなさんへ

Chinkokuji-temple, Munakata, Fukuoka, Japan Leica M10P, 1.4/50 Summilux, RAW


(これは10/30のエントリ「この国ではファクトや論理より空気のほうが重い」からの抜粋です)


データや情報はメディアに頼らず自分で元ソースから見て考えることが大切です。それも一つだけではなく、ここで行ったように何重にも複数の情報を横断的に比較しないと意味がわからないことはたくさんあります。これらの読み解きや確認すべきポイントはどこかにまとまっているわけではありません。その領域についてのある程度の基礎知識を持った上で、全体感を把握しつつ、狙いを定めていくのが基本です。ざっくりとした地図を持って入る探検に近い感じです。

感染者数のような同類に見える数字も同じ母数(例えば極端に人口組成が変わらない前提での人口10万人など)同士になるように、あるいは同じ割合で比較してはじめて意味があります。約1,400万人の人口を抱える東京都で感染者数が多いのは当たり前です。%は何を何で割っているのかを理解しなければ比較することはできません。A/Bの分母分子が同じ性質なもの同士で比較できているのか常に確認しましょう。本当にこれとこれを比較して意味があるのかを常に考えながらやってみることが大切です。(これをapple to appleとよく言います。)

幸い今の時代には「検索」があります(20世紀にはなかった社会インフラです)。検索はインターネットの力、莫大な計算機リソース、驚異的なAI技術を駆使して作られたものですが万能ではありません。とはいえ、キーワードの組み合わせ方など、調べるのが上手くなれば適切な情報源に辿り着くには大体のケースで数分もかからないようになります。これにも慣れていきましょう。そうすることで与えられたものだけでないことからモノを考えることができるようになっていきます。その上で検索で出てきた原典の論文や本まで調べられるようになれば素晴らしいです。

あと割とすぐに気づくと思いますが大切な情報は日本語では手に入らないことがとても多いです。もしくは偏った情報、切り取られた情報が多い。英語で調べられるようになると100倍力になるのでオススメです。要約やまとめサイトはかなりのバイアスがかかっているのが普通なのでいきなり見るのはおすすめできません。まずはそれよりその領域の基礎的な知識を確認したほうが探検の役に立ちます。SNSはもちろん、紙の本ですらあやしい内容は多いです。できるだけ加工されていない情報(一次情報)を確認するとともに、メディアなどの権威に振り回されず「健全な懐疑心」を持ってすべての情報源にあたりましょう。

(参考)Wikipediaがまとめた有名情報源の信頼度、、、Encyclopædia Britannicaですら△です。
Wikipedia:Reliable sources/Perennial sources - Wikipedia

その手に入れた情報を元に点と点をつなぎ、元データそのもの以上の何かに自分で気づいた時、皆さんは本物の力を手に入れたことになります。人がやった分析結果を理解するのは、自力で分析するより圧倒的に簡単です*1。しかし、欲しい情報はないことの方が圧倒的に多い上、信頼できる分析は思いの外少ない(学術論文は概ねOK)。自分の意思で目的を持って答えありきではなく、現在起こっていることを発見する力を持つ人は大人でもほんの僅かしかいません。踏み出してみましょう。きっと楽しい世界が待っています。世の中で言われているのと違うことがいかに多いか気づくでしょう。

この手に入れたファクトはまずは近くの人に共有して、そしてその意味合いを考えてみましょう。誰も気づいていないと思えばどんどんと発信していきましょう。ここまでこれば君らはもう心は立派な大人です。


kaz-ataka.hatenablog.com

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*1:とはいえ、データそのものの性質、分析の狙いと結果、その意味合いを正しく理解できる人は、それが比較的簡単なモノであっても実はとても少ないです。特に馴染みのある分野外のものを見るのは相当に困難です。これが世の中に専門的な訓練を受けた専門家が色々いる(社会的に必要な)一つの背景です。