この国ではファクトや論理より空気のほうが重い


Chinkokuji-temple, Munakata, Fukuoka, Japan
Leica M10P, 1.4/50 Summilux, RAW


先日、富山県の県立高校の先生、約2,000人の前でお話する機会があった*1。年に一度の合同研修の日ということだった。中高の教育システムとはあまりcompatibleではなかった僕のような人間が、先生方の前で話して欲しい、と頼まれる日が来るとはとかなりオドロキだったが、旧知の教育委員会の先生に1年も前からご依頼され、お受けせざるを得なかった案件でもあった。

自分が高校生だったら、先生方に何をわかっていてほしいだろうかということを考え、世の中について、必ずしも正しく理解されているとは思えない、理解されているなら現在のような教育になっていないだろうと思ういくつかのポイントになると思うことをお話した。

  • 曰く、世界は人口調整局面にあり、人口が減ることを前提とした社会を作る必要がある。これは教育だけでなく、あらゆる分野で起きる。この展望を受入れ、その変化とソフトランディングを担う人材を育てていく必要がある。
  • 曰く、既にデータやAIを使い倒したプラットフォーム企業が世界の企業価値のトップになって久しい。これはこれらの企業が最も「新しい不可欠な価値を」生み出しているということを意味している。電気や化学の登場と同じで、どれほど懐かしく思ってもデータやAIがない世界に戻ることは考えられない。したがって新しく仕掛ける側の人がいなければそうとう厄介なことに。そのためには価値観と基礎素養の刷新が必要。
  • 曰く、New economy全盛に見えるかもしれないが、既に第三勢力の時代に突入し、あらゆる産業で産業の境が組み変わっていきつつある。例えば、富山を代表する産業である製薬。この数年間、世界で最も多くの人の命を救ったクスリはmRNAワクチンだが、これは実質的にbioinformaticsとgenetic engineeringの産物。薬草、化学合成、抗生物質探索とは相当に異質。この変化はクルマ、エネルギー、農業、金融、娯楽などあらゆる分野で起き始めており、産業は一見同じだとしても、全く異なる大局観と見立て(perspective)が必要になる。
  • 曰く、この変化を受け「単独の知」の時代は終了し、collective intelligence集合知の時代に突入している。人と人とのかかわり合いから現状と課題を知り、価値提供の方向を見出し、人を動かすことが大切になる。専門的な深さも大切だが、特定領域の専門性だけでは課題を解決ができない上、様々な価値をappreciateでき、様々な人とのつながりから楽しみつつ価値を生み出していく力が大切になる。

(参考)
kaz-ataka.hatenablog.com

つまり、新しい展望と変化が次々と生まれる久しぶりに大変に希望に満ちた時代であり、これを切り開く力を持つ人たち、これを楽しみながら仕掛ける人たちが社会の宝になる。そのための人間としての基礎素養を身につけるべきときが中等教育、つまり中学と高校にあたる。中等教育を終えると約半数の人が社会に出て働き、約半数の人が大学にいって更に新しい知的課題の実情に向かい合う。社会にこの新しい基礎教養の育成を期待するのは少々ワイルドすぎ、大学に入ってからガラガラポンでは多くの人は受け入れられないと考えられる。

ということで、こういう変化を生み出せる人を育てられるのか、こういう変化を生み出す会社が欲する人を育てられるのか、、これが中等教育においても人材育成におけるkey questionであると。

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つぎに先生方にお話したのは、ここでデータとかAIとかと言う前に皆さんに考えていただきたい話がある、ということだった。


この夏、オランダとベルギーを周ってきた。クルマを借りて8日間で1000キロあまり移動し、加えてまち中ではバスやトラム(路面電車兼地下鉄)にも随分乗った。そこで見た風景はこんな感じだ。どこに行っても基本マスクをしている人はいない。滞在中、万単位の人を見たと思うが、おそらく90代以上の車椅子の老人が一度しているのと、アジア人がほとんどいない中、おそらく中国から来た人が一人、青いマスクをしてゴッホ博物館で見た程度だ。


A tram in Amsterdam , Netherland (August 2022)

かたや、駐車場やバス、トラムで現金を使えるところに遭遇することはなく、しかもPINコードでクレジットカードすら使えず、この写真の通り、非接触のクレジット払いばかりだった。カフェやレストランに行っても、非接触が基本で、PINを打ちたいというと、おお、と驚かれる感じだった。Withコロナ時代に即して社会は刷新、そして気持ちよくマスク無く暮らしているということだ。

で、東洋の某国に戻ってきたその足でみたとある駅での風景がこれだ。


Shinagawa station, Tokyo, Japan (August 2022)

おなじスマホで撮ったのかと思うほどなぜか陰鬱な印象を受ける*2。これは光の具合もあるが、誰もがマスクをし、朗らかな表情や雰囲気が見られないことが大きい。この風景から推定されるのは、日本はいまだに集団免疫が形成されておらず、相当に毒性の高いCovidがはびこっているということだ。

翌日、代官山にクルマで行った。駅そばの駐車場に停めようとしたが、クレジットカードが使えず(使えるはずだが故障)、現金払いしか受け付けない状態になっており、近くの郵便局でお金を下ろして支払いをした。その後も都内の様々なところ(特に自販機、駐車場、街角のお店)で現金しか受け付けない場面が様々に繰り返され、暗澹たる気分になったことは言うまでもない。この社会はこれだけの変化がありながら、やるべき革新をおこなわなかったということだからだ。Covidの発生は構造的な背景によるものであり、パンデミックはいつ何時また発生するかわからないのにだ*3

データを見てみよう。この東京都のモニタリングデータから見て分かる通り、たしかに昨年の夏と比べるとピーク時7倍近くのCovid感染者が発生した。


(第101回)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議資料(令和4年9月8日)

しかし、今年の夏の新規重症数は昨年夏のせいぜい1/4程度だ。つまり新規重症/新規感染は約1/30まで落ちたということになる。実際に単純にピークの感染者数とピークの重傷者数を割れば約1/4000(0.025%)であり、ほぼインフル並み(約0.03%)といっていいレベルに落ちている*4。風景から推定される姿と事実は逆だ。

2020年春「Withコロナ」という言葉を言い出し、このコロナナーバスな状態が少なくとも2年程度は続くと僕が言った時、厳戒的な状態から脱出する前提は社会に集団免疫が形成されることだった(参照:当ブログ「そろそろ全体を見た話が聞きたい2」 2020-04-04)。

kaz-ataka.hatenablog.com

なぜならパンデミックがロックダウンのような社会のスクラム停止ではなく、本質的に落ち着くためには特効薬が生まれるか、いわゆる"集団免疫 (herd immunity)" が形成されるしか方法が無く、結核やインフルの事例から分かる通り、特効薬の開発は数十年単位で掛かる可能性が高いからだ(実際そのとおりの展開)。集団免疫は自由落下(free fall)的に自然感染が広まるか、ワクチンを片っ端から打つ(ロールアウトする)ことのどちらかによって社会的な獲得が可能になる。集団免疫は最低6割、可能ならば8割を目指すべき、というのがCovidよりも感染力の高い麻疹の事例からほぼ自明だった。

(参考)このあたりの議論は以下に収録された論考にかつて整理した。


ちなみに、現在は、といえば昨年秋からほぼ8割の人がかなりの免疫力=抗体価を持つ、いわゆる集団免疫獲得(当初は2度、現在は3度のワクチン接種もしくは、接種+自然感染による発症)状況にある。これは接種率、抗体価の低下、これまでの感染者数からのおおよその値だが、実際にそう考えなければ、デルタと比べて致死率 *5 が下がっているわけではないというオミクロン*6で重症化する割合がここまで桁違いに落ちることは説明困難だ。昨年夏の米国CDCの調べによるCovidワクチンの2度接種で入院、死亡リスクが約1/25になるというデータともオーダー的に合致している(拙ブログ「第5の波」に掲げたデータをご参照)。

なお、あいにくCovidの場合、終生免疫になることはなく、ワクチンの効果は接種から日が経つと下がることがわかっている(感染、発症も同様)*7。したがって、集団免疫の度合いは日々刻々と変化し、インフル同様に定期的に「ワクチンを打つか、ある程度免疫のある状態でCovidに罹る」ことが必要だが、それを守っていれば目標の状況を維持し続けられると考えられる。欧米の各国がマスクをとっている背景はこれだと考えられる。凶暴な株が発生すればすぐにアナウンスされ、方針は変えられるだろう。


デジタル庁 新型コロナワクチンの接種状況 (as of 10/30/2022)

もちろん全人口に対して、米国の麻疹同様、ワクチン接種率が9割まで上がれば、重傷者、致死者の数をもう1段下げられると考えられるが、終生免疫ができないこと、生理的にどうしても打てない人がいることを踏まえると、この辺りの維持が現実的な値なのではないだろうか。一方で変異しやすいこのある種の風邪ウイルスであるSARS-Cov2はインフル同様、そう簡単に消えることは考えにくい。つまり、現在よりも目に見えて劇的に状況を改善することはそれほど現実的ではなく、いまぐらいの状況で手を打たないとずっとマスクは外せないことになる。

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昨年夏、本ブログとしては例外的に喫緊課題についての啓蒙、啓発活動を行った。デルタ株がいかに危険であるかということ、またウレタンマスクはいかに意味がないかということ、一本でもワクチンを打つことがどれほどいま大切であるかということを説明し、訴えた。この時は日本国の約7割の人がワクチン接種をまだ一度もしておらず、特に50代未満は医療関係者以外、ほぼ無に近い丸腰(無防備)の状況。デルタというかなり毒性の高い株が現れ、50代は25%、20代ですら2%もの人が罹ると中等症以上になり、20代の死者も出たという恐ろしい状況だったからだ(参照:「第五の波」2021-08-04)。

kaz-ataka.hatenablog.com

たしか数日で10万を超えるアクセスがあり、翌日、とある事務次官から直接電話があったのを今もよく覚えている。だが、当時は路上でもマスクをしていない人が当たり前のように相当数存在し、渋谷の宮下パークのわきの飲み屋街などは、Covidがあるのが信じられないというレベルで若者たちはほぼ誰もマスクをしていなかった。しててもウレタンマスク。

デルタが来そうとなった7月後半から、菅総理の決断と河野ワクチン担当大臣の見事なリーダーシップにより、人口比率的に世界最速(当時)でワクチンロールアウトが進み、第五波は驚異的なスピードで鎮火したが、あれがなければ本当に戦争並みの被害者が出てもおかしくなかっただろう。お二人はきっとシン・ゴジラ統合幕僚長同様「礼はいりません、仕事ですから」ときっとクールにおっしゃると思うが、潜在的に救った命の数を考えれば国民栄誉賞ものだと思う。

現在、明らかに意味のないオープンエア空間ですら、この国の人たちの大半は路上でもマスクをしている。驚くべきなのは大きなリスクなど本当に考えられない郊外の疎空間ですらそうであるということだ。都市部に関しては、2021年夏、強毒株であるデルタが空気感染することが明らかになりつつある一方で、集団免疫がないときの対応としては実に正しかった。が、当時それを行わず、今それをやっているというのは荒唐無稽だ。マスクがあると化粧しなくていいので便利という理由でしていない友人女子が散見されるので、それは多少あるとしても男子は何のためにしているのだろうか。世界の主要国がワクチン接種下におけるWithコロナ生活に突入し*8厚労省のお達しが出ても変えられないというのはよほどのことだ。

一方、ようやくオミクロン対応のワクチンが生まれてきても、四度目のワクチンは打つ気がない人が多い。ワクチンの効果が落ちていくことを考えると、自然感染をするか、罹りたくなければワクチンを打ち続けることが集団免疫の維持のために必要であることが理解されていない。なぜこのような態度は許されてしまうのか。

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似た話がもう一つある。

ちょうど9年前、HPV(ヒトパピローマウイルス)の女子へのワクチン接種が中止になった。それはこのワクチンに対する恐怖が広まり、なかば社会がパニックになったからだ。しかし世界の主要国で普通に打たれ続けてきて億単位の接種者がいるワクチンが、日本においてのみ極端に害をなす可能性は相当に低く、あまり科学的な判断をこの社会が行えなかったことは明らかに思う。社会がある種のヒステリー状態になっていたため、厚労省としては致し方なかったとは思うが、なぜこのようなふうに社会が暴走してしまったのかが問題だ。

www.nikkei.com


林ほか「HPVワクチンをめぐる日本のツイッター上の賛否両論の対立と変化」


で、今どうなっているのかと言えば、明らかにHPVに感染している人が増え、更に接種をしていない年代の女子からは細胞レベルで異常を持つ割合が一時期下がったのにまたもとに戻ってしまっている。


Sekine M et al., Suspension of proactive recommendations for HPV vaccination has led to a significant increase in HPV infection rates in young Japanese women: real-world data. Lancet Reg Health West Pac. 2021 Oct 21;16:100300


Yagi et al., The looming health hazard: A wave of HPV-related cancers in Japan is becoming a reality due to the continued suspension of the governmental recommendation of HPV vaccine

子宮頸がんの診断数は年に約1.1万人、死亡数は約三千人(国立がん研究センターによる)。毎年漸増している(子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために|公益社団法人 日本産科婦人科学会)。次の図から分かる通り、ワクチンの効果は極めて高いことがわかっており、かつては二価だったが現在九価まででている(九種類のサブタイプに対応)。ワクチン接種によりこの多くが防げることは明らかだ。逆に言えば、ワクチン接種を止めてしまうのは潜在的に子宮頸がんの犠牲者だけで年間千人規模の人の命を失うことにもつながりうる。



Kurosawa et al., Long‐term effectiveness of HPV vaccination against HPV infection in young Japanese women: Real‐world data Cancer Science (31 January 2022)

また大きく誤解があるのはHPVワクチン = 子宮頸がんワクチン、という認識だ。実際には、子宮頸がんだけでなく、肛門ガン、舌ガン、陰茎ガンなど数多くの入り口、出口系のガンにHPVは深く関与している。逆に言えば、これらは数少ないワクチンで防ぐことができるガンの類だ。HPV感染は誰にとっても危険なものであり、実際には男女問わず打つべきワクチンであるといえる。


How Many Cancers Are Linked with HPV Each Year? | CDC


この2つの事例からわかることは、山本七平氏が『「空気」の研究』(1977)を出してすでに45年が経ち、21世紀に入って久しい現在ですら「この国ではファクトや論理より空気のほうが重い」ということだ。これは、行動規範だけを見れば、ほぼ途上国ということでもある。現在の状況を脱する、すなわち、空気、常識、権威で判断することが正義の時代を一刻も早く終了させる必要があるのではないだろうか。

何ら判断の軸がないというような特殊な事態をのぞけば、空気はあくまでファクトと論理の上にあるべきだ。ファクトや論理無く、空気だけで判断するコストは高い。ファクトや論理に基づくフラットな判断が出来ないのであれば、科学もデータサイエンスもあまり意味がない。どれほど解析ができても、これが出来なければ未来への影響は生まれないからだ。周囲の目や空気ではなく、ファクトを元に考えることができるか、正しくファクトから意味合いを引き出せるか、ということだ。これがデータドリブン社会の基礎であり、臭いものに蓋をする、長いものに巻かれる、とは全く逆の発想だ。

一点明確にしておきたいのは、僕は「空気を読む力」を否定しているのではないということだ。場を読み切って適切なところに適切に差し込む力は日本で育つ人の持つある種の魔法であり、特殊な技能と言える。「?」と思われるかもしれないが、僕の限られた経験でもこの力は国際的な場、様々な国の人が入り交じる交渉の場において実にパワフルだ。しかしその差し込みのためにも、正しく何がどうであるかをある程度、自力で判断できなければいけない。

これはちょっと前にも書いた「健全な懐疑心」の話と表裏一体であり、教育/人材育成の育てるべき最も根源的な能力の一つだと言える。その基礎的なマインドを中等教育が終わるまでに徹底的に打ち込むべきだと思うがいかがだろうか。

kaz-ataka.hatenablog.com

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富山ではそんな話をした。

実はもう一つ大きな話をしたのだが、それは余力があればまた出来ればと思う。

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ps. 更にこの議論は横に展開し、昨日はついに将棋の元名人が、終盤戦、30分ほどマスクをしていなかったということで、その最高位の戦いであるA級順位戦で敗退をするという歴史に残る残念な事件があった。

www.asahi.com

ルールはルールとはいえ、もっとも論理的な思考に強いはずである将棋の世界においてまでもが、事実を踏まえた判断をしないままルールが据え置かれていたということであり、たしかに将棋界は日本の文化を背負った空間であった、ということも言える。

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One more thing..

空気に飲み込まれたくない中学生、高校生のみなさんへ

データや情報はメディアに頼らず自分で元ソースから見て考えることが大切です。それも一つだけではなく、ここで行ったように何重にも複数の情報を横断的に比較しないと意味がわからないことはたくさんあります。これらの読み解きや確認すべきポイントはどこかにまとまっているわけではありません。その領域についてのある程度の基礎知識を持った上で、全体感を把握しつつ、狙いを定めていくのが基本です。ざっくりとした地図を持って入る探検に近い感じです。

感染者数のような同類に見える数字も同じ母数(例えば極端に人口組成が変わらない前提での人口10万人など)同士になるように、あるいは同じ割合で比較してはじめて意味があります。約1,400万人の人口を抱える東京都で感染者数が多いのは当たり前です。%は何を何で割っているのかを理解しなければ比較することはできません。A/Bの分母分子が同じ性質なもの同士で比較できているのか常に確認しましょう。本当にこれとこれを比較して意味があるのかを常に考えながらやってみることが大切です。(これをapple to appleとよく言います。)

幸い今の時代には「検索」があります(20世紀にはなかった社会インフラです)。検索はインターネットの力、莫大な計算機リソース、驚異的なAI技術を駆使して作られたものですが万能ではありません。とはいえ、キーワードの組み合わせ方など、調べるのが上手くなれば適切な情報源に辿り着くには大体のケースで数分もかからないようになります。これにも慣れていきましょう。そうすることで与えられたものだけでないことからモノを考えることができるようになっていきます。その上で検索で出てきた原典の論文や本まで調べられるようになれば素晴らしいです。

あと割とすぐに気づくと思いますが大切な情報は日本語では手に入らないことがとても多いです。もしくは偏った情報、切り取られた情報が多い。英語で調べられるようになると100倍力になるのでオススメです。要約やまとめサイトはかなりのバイアスがかかっているのが普通なのでいきなり見るのはおすすめできません。まずはそれよりその領域の基礎的な知識を確認したほうが探検の役に立ちます。SNSはもちろん、紙の本ですらあやしい内容は多いです。できるだけ加工されていない情報(一次情報)を確認するとともに、メディアなどの権威に振り回されず「健全な懐疑心」を持ってすべての情報源にあたりましょう。

(参考)Wikipediaがまとめた有名情報源の信頼度、、、Encyclopædia Britannicaですら△です。
Wikipedia:Reliable sources/Perennial sources - Wikipedia

その手に入れた情報を元に点と点をつなぎ、元データそのもの以上の何かに自分で気づいた時、皆さんは本物の力を手に入れたことになります。人がやった分析結果を理解するのは、自力で分析するより圧倒的に簡単です*9。しかし、欲しい情報はないことの方が圧倒的に多い上、信頼できる分析は思いの外少ない(学術論文は概ねOK)。自分の意思で目的を持って答えありきではなく、現在起こっていることを発見する力を持つ人は大人でもほんの僅かしかいません。踏み出してみましょう。きっと楽しい世界が待っています。世の中で言われているのと違うことがいかに多いか気づくでしょう。

この手に入れたファクトはまずは近くの人に共有して、そしてその意味合いを考えてみましょう。誰も気づいていないと思えばどんどんと発信していきましょう。ここまでこれば君らはもう心は立派な大人です。

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大人の方へ

まずは勇気を持ってマスクを取って人混み以外のまちを歩くことからはじめましょう。また新種の激しいパンデミック(いままでのワクチン接種や感染歴が無効になるようなCovid株も含む)が来たら、しばらくはまたマスクせざるを得なくなるのですから。

そしてもし可能なら、上の中高生の皆さんへのアドバイスをみなさんも少しずつやってみて頂ければ、そして周りの中高生がこういうスタンスでやっているのをぜひ励ましてあげて頂ければ幸いです。彼らが僕らの社会の未来そのものですから。



(参考)
中根千枝先生の歴史的な一冊

数理データサイエンスAI領域の基礎を確認したい人に第三回のDS検定です。申込みは11/6まで!
www.datascientist.or.jp

11/14開催 データサイエンティスト協会の年に一度のシンポジウムです。メディア・コンテンツ解析の産総研 後藤先生、エクサウィザーズの石山さん、AIcia solidの中の人、杉山さんなど日本を代表する専門家が集結。僕もスキル定義委員会のセッションに登壇します。しかも懇親会までセット。学生はオンラインは何とタダ。申込みは11/11まで。定員に達する前にgo! 笑
www.datascientist.or.jp

*1:1,000人入るというホールに約500人、オンラインが1,500名程度

*2:帰国当初、10人以上にただ写真を見せて、どう思うかと聞くと一様に同様のコメントを得ている

*3:後述の2020春の拙ブログエントリをご参照

*4:季節性インフルエンザの重症化率については第90回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年7月13日)資料6 を参照

*5:致死率 ≒ 感染率 x 感染時の重症化率 x(1-重症時の生存率)と考えられる。病院があふれると重症時の生存率が下がる。22年頭段階の米国では、以下のCDCの報告にある通り、オミクロンはデルタに比べ感染に約5倍しやすく、入院数が1.8倍に増大。これは感染時の入院率が約4割弱ということで、決して桁違いに入院率が下がっているわけではない。(そもそも感染性の高さのために致死数も増大) CDC : Trends in Disease Severity and Health Care Utilization During the Early Omicron Variant Period Compared with Previous SARS-CoV-2 High Transmission Periods — United States, December 2020–January 2022

*6: the mortality rate during the Omicron outbreak is still higher than at the peak of the Delta outbreak. Even with a higher fully vaccinated rate, the mortality rate during this period is still higher than the previous Delta outbreak. - Duong et al., Is the SARS CoV-2 Omicron Variant Deadlier and More Transmissible Than Delta Variant? Int J Environ Res Public Health. 2022 Apr; 19(8): 4586 より

*7:mRNAワクチンの特性に加え、インフルを超える多様性と変異性の高さの相乗効果によるものと推定される。詳しくは阪大 宮坂昌之先生の「新型コロナの不安に答える」 (講談社現代新書)をご推奨

*8:中国のみZeroコロナ施策で特殊

*9:とはいえ、データそのものの性質、分析の狙いと結果、その意味合いを正しく理解できる人は、それが比較的簡単なモノであっても実はとても少ないです。特に馴染みのある分野外のものを見るのは相当に困難です。これが世の中に専門的な訓練を受けた専門家が色々いる(社会的に必要な)一つの背景です。