1.4/50mm Summilux, Leica M10P, Ebisu, Tokyo
6日ほど前、思わず以下のようにTweetしてしまった。
Netflix、、#FirstLove初恋
— Kaz Ataka / 安宅和人 (@kaz_ataka) 2022年12月16日
すごい作品でした。#満島ひかり さん天才。大竹しのぶを継ぐのは彼女かもしれない。#佐藤健 さんの佇まいの揺らぎで伝える姿は神々しさすら感じた。エンドロールを見る限り8話で一旦完結。9話はとても贅沢なエピローグhttps://t.co/WiaAh7JzFP
若い姿を演じた八木莉可子さんと木戸大聖さんの輝きはまばゆく、濱田岳さんの作る間合いと空気感はすごいものだった。美波さん演じる妹もリアリティと質的存在感が素晴らしかった。
あれほど魅力的で存在感のある、小泉今日子さん、夏帆さん、向井理さんがそれぞれしっくりと馴染んでいるのもうれしかった。
加えて、綴(つづる/荒木飛羽)と詩(うた/アオイヤマダ)の若く強く多重奏的な存在。、、、うたを綴る、それってまさにこの作品の主題。
どの方も声が素晴らしく、楽器の奏で合いのようでもあった。監督が演技だけでなく、喉も大切に人選されたことがわかる。
この作品には3つの大切な出会いと愛が現れる。若い主人公の二人にまず起きる出会い、おとなになった主人公に深く染み入るように起きる出会い、そして主人公の子である綴に起きる出会い。この3つが絡まり合い、影響しあい話が進んでいく。
とにかく絵が美しく、フレーミングも完璧。色と明暗の出方、画像の粒子感は銀塩*1で撮っているとしか思えなかった。入念にミルフィーユのように組み上げられた世界の再構成が実に繊細で無理がない。時間効率視点で間合いを飛ばして観る人が多いようだが、そういう方々には到底楽しめない作品でもある。
主役のお二人、寒竹監督、出演者の方々に加えて制作チームの方々に心から感謝。
(参考)銀塩とデジタル写真については以下をご参照
kaz-ataka.hatenablog.com
作品名のもとになっている宇多田ヒカルさんの音楽は言うまでもなくfantastic、まさにkeynote(基調となる音)。実際にかかっていようがいなかろうが、全編に脳の中で反響し、聴こえている。
(この作品にともなう宇多田ヒカルさんのFirst Love/初恋 (完全生産限定7インチアナログ盤) (メガジャケ付)はこちら)
これは9本繋いだ映画というべきものであり、これまでにない映像表現をNetflixというプラットフォームが生み出したとも言える。映画同様、いつまでも観られる作品として残して欲しい。
ちなみにTwitterで #FirstLove初恋 と検索すると世界中の各地からかなりの量のTweetを観ることができ、この作品が世界的に愛されていることが生々しくわかる。
https://twitter.com/search?q=%23FirstLove%E5%88%9D%E6%81%8B&src=recent_search_clicktwitter.com
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僕にはめったに無いことだが、見終わって造り手のみなさまの録画を拝見した。
佐藤健さんがほぼ一年この作品にかかりきりだったと話をされているのを見て思ったのは、いま日本の映像づくりに足りていないのは、十分なお金と時間なんだな、若い才能を理解し支えうるだけの懐の深い支え手なんだなということ。世界レベルの作り手は監督も俳優もちゃんといる。
先日まで行われていたワールドカップ同様、これらは広い業界の広がり、社会の熟成がなければそう簡単に生まれるものではなく、これは本当に誇るべきものだと思う。
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で、この内容のTwitterをポストをしたら、既存の媒体の体力がないからというようなコメントをする人がいらした。が、TVキー局の展望については以下のエントリ通り、14年前にはほとんど歴然としていたと思う。
世界的にみても、iab Canadaのレポートをご覧いただければ分かる通り、メディア力の代替指標としての広告市場規模は北米では9年前の2013年にTVがインターネットにトップを受け渡している。2022年の場合、世界のAd市場はざっくりTV $170B、Google $168B(≒ TV総市場)、Meta $113Bだ。
単純に日本では業界外であまり認知されていないだけということと、日本では広告出費のシフトが視聴時間のシフトに沿っての進みが遅いだけのように思う *2。米国ではさらにTikTokがYouTubeに媒体としての広告収益で遠からず抜き去るという予測もある。
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話を戻そう。この国に、これだけのものを生み出す才能は十二分にいる。これを確信できただけでも本当に大きな収穫だ。
とはいえ、ゲーム同様、潤沢な投資を行って世界的に広く回収する仕組みをどのように持てるのか、、それがこの作品の突きつけているもう一つのkeynote(基調音)だと思ったのは恐らく僕だけではないだろう。
ps. 本エントリはtwitterとfacebookに投稿したものに大幅に手を加えたものです。
(1/15/23 22:35追記)#スラムダンク を同じ日に3度連続で映画館で見たという親しい友人がいて、原作を読んだことのない僕もIMAXで観た。とても良くていま原作を読んでいるが、この主人公の #桜木花道 (さくらぎはなみち)の #晴子 (はるこ)の一言から始まる変化が #FirstLove初恋 の #並木春道 (なみきはるみち)と重なりすぎると思うと名前にも大きな重なりがあることに気づく。たくさんのオマージュがこの作品には織り込まれている。
*2:ワクチン接種の広がりにより、ほぼ落ち着いたCovidで事実に即してマスクを外せないのとも似ている(参考)この国ではファクトや論理より空気のほうが重い - ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Between Neuroscience and Marketing